2014年04月18日

第3回電王戦総括 コンピュータとの共存共栄と今後の電王戦について

将棋の内容は、完敗と完勝が1つずつ、接戦が3つでした。
接戦となった3局は、長いねじり合いの末、コンピュータの粘り強さに屈しました。

全体的に競った将棋が多かったですが、結果でみれば1勝4敗で、2回(+リベンジマッチ)で3勝7敗1持という結果はソフトの実力を表しています。
ここまでの結果を、ある程度実力を計る意味で順位戦のクラスで分けてみると
B級1組以上…1勝2敗
B級2組以下…2勝5敗1持
となり、谷川会長の「ソフトの実力はプロの中位以上」という言葉はしっくりきます。
ソフトの実力はすごいところに来ている、それがハッキリしました。

イベントとしては、トラブルもあって途中は不安も抱きましたが、第4・5局の視聴者数や世間の反応を見ると、将棋の世界を知らない人まで巻き込んだビッグイベントに育っているようです。
第2回に続き、「ファンに喜んでもらえるかどうか?」という観点では勝ったと思います。

プロ棋士vsコンピュータという構図は、最初の頃に比べて人々の感じ方が変わってきていると感じています。
コンピュータの強さが認められたことで、対決だけではなく対局者(開発者含む)の物語、そしてその周辺の諸々にも注目が集まっています。
プロが負けるのは驚くけど、今はコンピュータに勝てる分野なんてほとんど無いし、棋士の人生に興味があるし、電王手くん面白いね、という感じが生まれているかと。
そこで個人的には今までの形にとらわれず、今後は真剣勝負とエンタメをよりうまく共存させて楽しめるものを提供するのがいいと思います。
将棋ファン、ニコ生ファン、そして将棋を知らない人にも楽しんでもらえるよう、より高めていくことができるはずです。

コンピュータとの戦いにはどこかで区切りをつけるべきと主張する人も多くいます。
ソフトが「プロの中位以上」になった以上、プロのトップと戦っても勝つ可能性は十分あります。
人間側のトップが一度でも負ければ、チェスの歴史に則ると、将棋もコンピュータに越えられたということで決着、終わりになりそうです。
でも将棋界にとって決着をつけることに意味があるのでしょうか。
「共存共栄」を目指すなら無理に決着を付ける必要はないと思います。

将棋はもっと一般社会に出ていきたい、出ていくべきものです。
ここ最近、棋士がメディアに取り上げられる機会が増えています(怒り新党の豊川七段は最高でした!)。
いい波が来ていることは疑う余地がなく、その波に乗れるのか、将棋界としても勝負所です。

将棋というものが一般に広く知られ、より発展した日本文化となっていくことを私は強く望んでいます。
将棋を愛する全ての人(今まで応援いただいている全てのスポンサー含む)にとって、それは素晴らしい未来だと確信しています。
電王戦はその一助となりつつあります。今後はより人間とコンピュータが手を取り合い、「共存共栄」しながら素晴らしい未来へ向かいたいです。

最後に第3回電王戦エンディングPVを。
次のニコ生のビッグイベントは超会議です。私も出演します!
詳細はこちら


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 08:00| Comment(21) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月15日

第3回電王戦第5局

既報の通り第3回電王戦第5局はPonanzaが屋敷九段に勝ち、コンピュータ側の通算4勝1敗で幕を閉じました。

私は終日現地に詰めて検討にも加わっていました。
この対局ほど人間とコンピュータの価値観がぶつかり合った対局は見たことがありません。
戦いが始まってから、棋士はほぼ全員先手持ち、控室のソフトと対局者(Ponanza)は全員後手持ちでした。

こういう場合どちらかが正しいというよりは、形勢が難しいケースが多く、本局もその例にもれないでしょう。
104手目の△8三歩まで、均衡の取れた素晴らしい内容でした。
互角のままずっと推移していったらどういう結末を迎えたのか。素敵な推理小説のトリックを読み損ねてしまった気持ちです。とはいえ屋敷九段もPonanzaも戦いが始まって80手近く好手を続けていたと思われ、その強さにはため息が出ました。検討していて勉強になりました。

最後のミスについての真相は本人しかわかりませんが、さすがの屋敷九段といえども体力気力とも苦しい状況だったと思われます。
森下九段が記者会見等でさかんにお話されていた「ヒューマンエラーをどうなくすか」というのは人間の大きなテーマであり、今後も特に対コンピュータ戦で問われていくでしょう。

これで長い5週間が終わりました。最後は打ち上げにも出席し、余韻を楽しむように深夜まで関係者や開発者とお話をしていました。


第3回電王戦は最初盛り上がりに欠けている印象で、第2局では不幸なトラブルもあり、先行きに不安を感じていました。
しかし熱戦が多かったことや関係者の努力もあり、1局毎に盛り上がりをみせ、最後は70万人を超える来場者数でした。一つの番組では前例が少ないほどの多さとか。
情熱大陸など一般的に取り上げていただく機会も多く、この電王戦には大きな価値があり、潜在的な力もかなりあると認識しています。

第4回についてはまた項を改めて、総括と一緒に書こうと思います。


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 13:17| Comment(7) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月11日

電王戦最終第5局告知

明日土曜日は電王戦第5局屋敷九段−Ponanza戦。
対局ページ
対局PV
棋譜中継は日本将棋連盟モバイル

いよいよ第3回電王戦も最終局を迎えます。
全国各地、様々な場所で行われてきて、最後は将棋の総本山将棋会館での対局です。
ここまで人間側の1勝3敗。負け越しは決まりましたが、最終戦の結果が与えるインパクトははかり知れず、非常に大きな一番です。

前回の記事で手番について考察しました。
第5局は人間側が電王戦で勝ち星の全てをあげている先手番。屋敷九段はA級順位戦で先手番16連勝という大記録を持っています。それだけ見ると今回は人間が勝ちそう、となるでしょう。

しかし一方Ponanzaは、電王トーナメントで決勝Tを全て後手番で勝ち抜きました。
コンピュータ将棋は特に先手番で強いというデータがありますが(参考記事)、その中で全て後手番で勝ったのはすごいの一言。しかもその3勝は習甦、やねうら王、ツツカナ。全て第3回電王戦でプロに勝ったソフトです。
またニコ生の様々な企画で対アマ戦200戦近くを全勝。それも全て後手番でした。
そう考えるとどうやったらPonanzaに勝てるのか、とも思ってしまいます。

持ち味を発揮した、素晴らしい将棋になることを期待しましょう。
ご注目ください!


それではまた
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2014年04月08日

第3回電王戦第4局 手番による勝率の違いとコンピュータ将棋の特徴

既報の通り第4局はツツカナが本格矢倉で森下九段を下し、コンピュータ側が3−1となって勝ち越しを決めました。
序盤〜中盤の入り口までは森下九段がリードしていましたが、そこからツツカナが地力を発揮。
コンピュータが得意とする中盤のねじり合いで差を付けられてしまった印象です。

今回は今までの振り返りと視点を変え、先手後手の勝率について記します。

ここまで電王戦は計10局行われました。
手番だけを抜き出すと、以下のようになっています。

第1回:後手0−1
第2回:先手1−2、後手0−1−1
第2回リベンジマッチ:先手1−0
第3回:先手1−1、後手0−2

トータル:先手3−3、後手0−3−1

参考にする局数は少ないですが、とはいえ見逃せないデータです。
先手が若干有利なのはプロ公式戦で証明されていますが、こと対コンピュータではそれが顕著に出ています。
コンピュータ同士でも先手がかなり有利のようで、電王トーナメントでも先手の勝率の高さが話題になりました。
人間とコンピュータが手を結んだタッグマッチは先手の3−1。ここでも結果がリンクしています。

なんだ将棋は先手が有利なんだ、と言うのは簡単ですが、もう少し踏み込んで考えるとそこにコンピュータ将棋の特徴があります。

コンピュータ将棋は初形で先手+70程度と判定するそうです。
逆に言えば後手は-70と僅かに不利。
淡々とした駒組みが続けばこの差はなかなか埋まりません。
そうこうしているうちに、激しく動くと-70より1点でも評価値が高いという局面があれば、性質上そちらに飛び込みます。

結果としてコンピュータは、先手番の時はじっくり進めて+の評価値を保ち、後手番の時は-の評価値を挽回しようと激しく動くのです。
ツツカナが第2回と第3回で指し回しが全然違い、実力が大きく上がったという表現を見かけることがあります。
勿論成長しているのは事実ですが、上記を考えると実力が大きく上がったと証明するのは難しいと思われます。
ツツカナは第2回は後手番だったので評価値を挽回しようと激しく動きました。
第3回は先手番で、評価値を+で保つためにゆっくり指しました。
どちらもツツカナであり、コンピュータ将棋の特徴です。

激しい局面は評価値のブレが大きいので、点数を間違える可能性が高くなります。20手読んで+100と判断しても、読まなかった21手目で-500になる、という変化は将棋にはよくあります。
なので後手番のコンピュータが突然激しく動いてきた時は、評価値を無理に挽回しようとしています。そこに隙が生まれることはわりとあります。
人間側の3勝のうち、2勝は後手のコンピュータが無理に動いてそこにカウンターを合わせました。
今回の豊島七段は、平凡に指すと評価値を挽回出来ないとみた後手番のコンピュータが定跡外の手を指し、そこをついて勝ち星をあげました。

コンピュータ将棋は1点でも評価値の高い手を選ぶ性質があります。
その性質が先手と後手での指し方の違いを生み出すのです。
手番によってまるで別人のような指し回しを見せるのは人間と違うところで面白いですね。


さて第5局は人間側の先手番。屋敷九段はA級順位戦という舞台で先手番16連勝という記録を持っています。
対するPonanzaは電王トーナメントで、決勝Tを全て後手番で勝ち抜きました。
まさに頂上決戦です!
私も大変楽しみです。皆さんも土曜日をお楽しみに。
屋敷九段−Ponanza戦 対局ページ PV
棋譜中継は日本将棋連盟モバイル


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 11:48| Comment(6) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月04日

電王戦第4局告知

明日土曜日は電王戦第4局森下九段−ツツカナ戦。
対局ページ
対局PV
棋譜中継は日本将棋連盟モバイル

ここまでの3局の観戦記がアップされています。
第1局 先崎九段執筆
第2局 河口七段執筆
第3局 船江五段執筆
本局はあの西村京太郎さんが担当されます!

さてここまで1勝2敗。前回と同じ星です。前回はここで塚田九段が持将棋に持ち込む将棋を見せました。
対局PVで「50歳でA級復帰、50歳過ぎての初タイトルを目指す」と宣言された森下九段。本局はいったいどんな指し回しを見せるでしょうか。
対するツツカナはコンピュータ将棋の中でも最も綺麗な将棋を指し、最強クラスのソフトです。
互いに本格派で矢倉が濃厚ですが、今シリーズは振り飛車が多いので、意表を突くツツカナの振り飛車もあるかもしれません。
序盤から目が離せません!


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 20:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月30日

第3回電王戦第3局 YSSのログを調べてみました

既報の通り豊島七段がYSSに横歩取りで快勝しました。
早速YSSはログを開示しており、大変興味深く、昨日の夜から夢中で見てしまいました。
以下に気がついたことを箇条書きで。

・1手につき、序盤は357秒、中盤戦以降は511秒で指すというのが基本だった。ただし途中でそれが493秒になったり揺れていて、なぜかは開発者の方に聞かないと分からない。

・序盤、△8六歩のところでは△2三歩や△4二玉や△4一玉も候補だった。
これは豊島七段に聞いた話とも一致。△2三歩には対策があったが、△4二玉や△4一玉は手強いと思っていたらしい。

・話題の△6二玉は、ほぼその一択とみていた。△2三銀や△3四飛も練習では指された、とは豊島七段談。

・それなりに時間を使っても△6二玉しか考えていないので、時間を使えばこの手を回避できるのかどうか、YSSに限っては疑問とみる。

・△6二玉では△5二玉が定跡でプロで大流行しているが、コンピュータ将棋のお気には召さない。電王戦第2局の時に色々なソフトに定跡を外させて聞くと△5二玉を示すソフトは見当たらず。△5二玉以外の場所へは行こうとするので、もしや△5二玉は疑問手なのか?!

・△3三同桂の辺りでは▲2一角には△4四角と読んでいたのに、直前に△3一銀に変更。この変更が運命の分かれ道だったかは不明。

・記者会見でも話していたように、練習では△4四角ばかりで△3一銀は1局だけだったとのこと。研究も薄いところだったようで、豊島七段にとってYSSの選択が吉だったかは微妙。

・△4四角以下の変化で、豊島七段が警戒し控室でも深く研究されていた手はログには表示されていない。

・△4四角で△2五歩も大変と思われるが、その手も表示されていない。

・▲4八銀はYSSにとって意外だった。対して△2一歩が有力と控室ではみていたが、YSSは△4四角一択。ちなみに控室で調べていた感じでは△4五桂が最有力だった様子。

・△9九角成と△2四飛でYSSが一気に形勢を損ねたというのが控室の見解なのだが、YSSはどちらもほぼその一手とみていた。

・▲3九金〜▲2九金打は人間からすると怖い竜を取って▲4二飛が残るので好手順にみえるが、いまいち評価していない様子。金香と飛の二枚換えだからか?

・▲2九金打と指されたところでYSSは不利を自覚したようだ。

・例の△1四金のところでは、少し前に△7九とに▲6五桂という手に気が付き、一生懸命に手を探して、ゆえに打った様子。代わる手は△1四歩だった。人間なら負けても△7九と、とやるところ。

・この△7九とに▲6五桂というのは人間にはひと目で、以下△7八とが詰めろにならないので▲5三桂成から詰めろが続けば勝ち、というのはアマ高段者なら分かること。

・しかし手数が長いのでコンピュータには読みにくい順。ログを見ると、▲6五桂以外では先手が大変なので、ゆえに途中までYSSは有利と読んでいる。しかし▲6五桂に気が付き、そこで長手数を読むことで段々と評価値が落ちている。

・なお我がPCのコンピュータ(スペックまずまず、ソフト性能良)に△1四金と打つ局面を511秒考えさせたが、▲6五桂には思い至らず。ただ▲6五桂の局面までいくとその手の良さが分かるので、読みでフォロー出来るかギリギリの手なのかも。

・これは昔から知られているコンピュータ将棋の弱点。一本道の長手数に弱い。意図的にこういう局面に持ち込むと人間がかなり有利だが、当然簡単なことではない。

・意図的に持ち込むのは現実的ではないが、そういう局面が現れやすい展開はある。その展開に持ち込む可能性をいかに高めるかが大切かも。

・このあとマイナスが4桁になり、終局に向かった。

・全体的に読みが噛み合っていない。

・読みに不可解な手が結構見受けられ、YSSにとって苦手な展開だったのかもしれない。

・コンピュータ将棋全般がこういう展開を苦手としている可能性もある。

・△6二玉が大悪手で将棋は終わり、というのはいくらなんでも短絡的というか、将棋はそんなに簡単ではないはず。初見では悪い手だと思ったが、そういう手が革命的な手になる可能性もある。結果だけで判断してはいけない。△6二玉〜△2三銀が成立すると、横歩取りに新たな風が吹くかも。

・ただし△6二玉と指したことでコンピュータ将棋が苦手とする展開に陥ったとはいえる。勝負という意味ではYSSの敗着は△6二玉だったかも。


豊島七段とも終局後に話をして興味深いことも多くありましたが、その辺りのことは観戦記担当の船江五段が書かれるでしょうからここでは記しません。
こうして両者の話(片方はログ)を聞けたことで一局の理解がより深まりました。

この一局は今後の対コンピュータ戦に於いて、エポックメイキングとなる可能性があります。
第1・2局のような揉み合いより、一気に勝負がつくスプリント勝負に持ち込んだ方がいいのかもしれません。
今までの電王戦で棋士が勝った将棋(第2回第1局阿部光四段、第2回リベンジマッチ船江五段、第3回第3局豊島七段)は全てそうでした。
コンピュータ将棋が苦手ということと同時に、人間側が集中を持続する時間が短くていいという理由もありそうです。
ソフトが踏み込んでくると「読み切られたか」と弱気になりやすいですが、そこで踏み込む勇気が対コンピュータには必要のようです。


第4局は森下九段とツツカナの対戦。
森下九段もツツカナの中盤力をかなり警戒しているので、この将棋のように一気に激しくなる戦いに持ち込む可能性はありそうです。
次局もご注目ください。


それではまた
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2014年03月21日

電王戦第2局告知

明日土曜日は電王戦第2局佐藤(紳)六段−やねうら王戦。
対局ページ
対局PVは諸事情あって現在は非公開です。
棋譜中継は日本将棋連盟モバイル

ごたごたがあって迎える第2局。対局者の佐藤六段の心境はいかばかりか。なんとか少しでも平常心を取り戻し、いい将棋を見せてもらいたいものです。
今回の騒動は佐藤六段は勿論、これから出てくる対局者にも大きな影響を与えたことでしょう。
人間は弱いもので、心技体のどれかが崩れると力を出すことが難しくなります。こういうことに無縁なコンピュータは羨ましい限りです。

この第2局は電王戦という存在にとって、非常に大きな意味を持つ一戦となるでしょう。
私も現地に赴き、諸々行う予定です。様々な出来事をこの目で見てこようと思います。


それではまた
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2014年03月16日

第3回電王戦第1局

既報の通り、習甦が菅井五段に勝ちました。
朝から一日控室に詰めており、検討も行いました。
勝負のポイントとなったであろう局面は以下の図。


2014.3.15菅井ー習甦56手.gif


7二の飛を△4二飛としたところ。この手が検討陣を唸らせた好手。傷を消しながら4筋に勢力を集めた、と言葉にするには簡単ですが、なかなか指せる手ではありません。菅井五段も指された時に読んでいないという表情でした。
対して▲5七金が弱気な手でどうだったか。▲5六金と前に進めば、勝負は分からなかったと思います。
本譜は▲5七金に△5四銀とされて制空権を握られてしまい、以下は勝てない将棋だったようです。

金銀のもみ合いというコンピュータ将棋が一番得意とする分野での戦いとなってしまい、習甦の実力を十二分に出されてしまいました。勿論菅井五段はそういう展開は避けたかったでしょうが、そう簡単にできるほど将棋は易しくありません。本局はコンピュータ将棋の対抗形の強さを改めて実感する一局でした。

局後の記者会見で第2局に関する言及とPVの公開がありました。
ビッグイベントの運営ということで色々なことがあるのは致し方ありません。私としても知らないことばかりで、記者会見を見て知ったことも多く、判断つきかねています。
2点残念なのは、
・前回の記事で書いた「ファンに喜ばれるかどうか?」の雲行きがだいぶ怪しくなったこと
・佐藤紳六段はじめここから登場する棋士が、集中して盤に向かえるかが大変心配なこと
将棋連盟が出来る唯一最大のことはイベントを成功させることですし、関係者一同それに向けて頑張るよりありません。
私もこのイベントをネット・モバイル事業の発展につなげられるよう、2局目以降も全力で取り組んでいきます。


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 15:40| Comment(7) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月14日

第3回電王戦開幕!!

明日15日(土)からいよいよ棋士vsコンピュータの第3回電王戦が開幕します。
第1局は菅井五段−習甦戦。

対局ページ 第1局PV
棋譜中継は日本将棋連盟モバイル

今回コンピュータの指し手はロボットアームが再現します。
「第3回将棋電王戦」将棋界初!ロボットアームを全対局に採用 新たな協賛企業デンソーが開発
DENSOロボットアーム[電王手くん] PV

いよいよ始まりますね。とてもワクワクします。
この記事を書くのにBGMがてら今までのPVを流していたのですが、第2回のエンディングPVは何度見ても素晴らしいですね!
皆さんも電王戦の熱気をニコ生や日本将棋連盟モバイルでぜひ感じてください!

電王戦はネット・モバイル事業にとっても非常に大きなもので、このビッグイベントをどう活かすか、またどう今後につなげていくか。モバイル編集長としても頑張りどころです。
今までの電王戦も全て会場に行っていますが、今回も出来る限り現地に赴き、糧にしていきたいです。

故米長永世棋聖がお話されていた(よくPVにも使われていた)「ファンに喜んでもらえるかどうか?」、これが電王戦の成功、また事業の成功というところで、大切なことです。第2回電王戦の総括で記事にもしました。
電王戦総括 「将棋界は何と戦っていたのか」
「ファンに喜んでもらえるかどうか?」これをいつも胸におき、私自身も自分の戦いを進めていきます。


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 10:01| Comment(3) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月02日

電王戦対局場の下見

大げさなタイトルですが、第3回電王戦の対局場に偶然立て続けに行っただけで、軽い話題です。

先々週の木曜日は両国国技館で相撲観戦をしました。
両国国技館は第2局佐藤紳六段―やねうら王戦が行われます。


2014.2.3国技館.JPG


そして日曜日は、有明コロシアムに行きました。
ここは第1局菅井五段―習甦戦が行われます。


2014.2.3有明コロシアム.jpg


ここでテニスのデビス杯が行われ、錦織圭選手が出るということで、妻と一緒に急遽行ってみました。
ところが当日券が売り切れで入れないというまさかの事態。。
そういうわけで写真も外観なのです。

意気消沈の末お台場へ行き、あれこれと遊んだらいい気分転換になりました。
10年位前によくやっていたダーツを久しぶりにプレイし、楽しさが蘇りました。
また、ヴィーナスフォートで思いがけずカジノ体験が出来て、今後の海外旅行につながりそう(?)です。


今週も色々とありますが、体調に気を付けて充実の日々としたいものです。

それではまた
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2014年01月04日

電王戦リベンジマッチ。人間が導いたソフトの形作り

先日のリベンジマッチの投了図は以下の図でした。

2013.12.31船江―ツツカナ戦85手.gif

後手玉が詰んでおり、一手差のきれいな投了図です。
しかし対コンピュータ戦ではこういう投了図は珍しく、大体差のついた図になりがちです。
有名なところでは第2回電王戦阿部光四段―習甦戦がまさにそうでした。

これはツツカナのことを知り尽くした船江五段が、ツツカナにソフトが絶対にしないはずの形作りをさせたからです。
直前に無駄手を指してきて勝利が決定的な中で指された▲8二飛。

2013.12.31船江―ツツカナ戦71手.gif

控室では詰めろだと分かると同時に、ツツカナに形作りをさせようという狙いが見えました。船江五段の真意がつかめた時、控室で歓声があがったのは言うまでもありません。これは2年間にわたってソフトと対峙し、ツツカナを知り尽くした船江五段だからこそ指せた手なのです。

さてもう少し具体的に説明すると、▲8二飛は▲4一金からの詰めろなのですが、ほぼ追い詰みながら手数がかかります。無駄合含めれば30手近い詰みで、基本的に20手+αがソフトの読みの限界なので、読み切れない可能性が高い詰みです。
詰みに絶対的な強さを誇るソフトですが、一直線の詰みじゃない(この場合後手が1手王手に絡まない手を指す)と読めない場合があり、トン死を食らうことがたまにあります。

詰みの部分はソフトによって違うので一概には言えず、詰みがあるかどうかだけ深く読むソフトもあります。ツツカナがどういうタイプかは分かりませんが、詰みを読めなければ、飛を取るという詰みを防ぐ以外で明らかに一番価値が高い手を指すはずです。

結果的に▲8二飛に対してツツカナが受けずに飛を取ったため、船江五段が望んだとおり綺麗な形で将棋が終わりました。
この▲8二飛は人間がコンピュータに形作りをさせる、そんな一手でした。
互いの呼吸が合わなければ綺麗な投了図は生まれません。船江五段とツツカナが互いを敬い合う関係だからできたことなのでしょう。

蛇足ながら詰み手順は、▲4一金△同金▲同と△同玉▲5二角△同銀▲5一金△3一玉(実戦は△同玉▲6二金から追い詰みに)▲4一金打△同銀▲同金△同玉▲5二銀△4二玉▲3一角△同金▲6三銀成△5一玉▲5二飛成。▲3一角というタダ捨てが入った綺麗な19手詰みです。▲6三銀成に無駄合をするともう少し手数が伸びます。


それではまた
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2013年12月30日

電王戦リベンジマッチが大晦日に!

いよいよ明日に迫りました。電王戦リベンジマッチ船江五段―ツツカナ戦。
放送ページ
リベンジマッチPV
日本将棋連盟モバイルで中継があります。

第2回電王戦の中でも特に印象に残る第3局。
私も2回にわたってブログで言及しています。
電王戦第3局
電王戦第4局中継予定と第3局△6六銀について

ツツカナは第2回と同じバージョン。普通に進めると4手目に△7四歩と突いてくる可能性が高いです。これを船江五段が受けるのか。そして前回終盤で逆転を喫した船江五段が、今度こそ勝利をつかめるのか。

ドワンゴ社の気合いの入りようもすごいもので、ニコニコ生放送原宿本社の最終日をこのイベントにあてていて、全館この対局用に改装したようです。TVCMも随分打っているようで、何度か見かけました。
私も現地に行って、その熱気を感じたいと思います。

2013年の最後に楽しみなイベント。ぜひご覧ください。


それではまた
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2013年12月13日

第3回電王戦詳細決まる

遅ネタですが、12月10日に電王戦の発表会があり、全詳細が決まりました。
人間vsコンピュータ「第3回将棋電王戦」の詳細決定 2014年3月15日〜4月12日に開催 安倍首相による振り駒で、先手番は人間側に決定 〜 ソニー・コンピュータエンタテインメント、日産自動車、ローソンが協賛 〜

3月15日(土)の▲菅井五段―△習甦戦を皮切りに、全5対局が行われます。
果たしてどんなドラマが生まれるのか。
コンピュータ将棋の進歩も著しいですが、人間側も前回よりずっとコンピュータ対策は進んでいるはずです。
いい勝負になることでしょう。

今回は対局場が派手な所ばかりで、前回よりスケールアップした感じがあります。
なにより振り駒が安倍首相というのはインパクトがありました。
多くの協賛が付いたことも何よりです。

色々イベントも企画されているようで、大きなところでは大晦日に船江五段―ツツカナのリベンジマッチが行われます。
「電王戦リベンジマッチ 船江五段vsツツカナ」12月31日に開催決定


私自身は発表会当日対局だったので生で観られませんでしたが、後追いでも反響の大きさを感じさせられました。第2回以上の盛り上がりを見せることでしょう。
楽しみにされている方も多いかと思います。期待していてください。


それではまた
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2013年12月08日

第3回電王戦発表会が12/10に開催!

12月10日(火)12:30より第3回電王戦発表会の模様がニコニコ生放送で中継されます。
第3回将棋電王戦記者発表会

私は順位戦の対局があるのでタイムシフト予約をしておきました。
モバイル編集長としてお手伝いしていることもありますが、詳細は知らないことも多いので発表会が楽しみです。
どの棋士がどのソフトと対戦するのか、そして場所や日程は。
年末のイベントとは一体どんなものなのか。
大物ゲストの登場も予定されているようで、そちらも注目です。


第2回電王戦については私も随分記事を書きました。
ご興味ある方はカテゴリリンクに飛んでください。
また電王戦関連では書籍も色々出ています。どれも読みましたが、当時のことが思い出されて興奮が蘇りました。








それではまた
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2013年11月07日

将棋電王トーナメント総括、プロ棋士と対戦するソフト、今後について

将棋電王トーナメントで5位までに入ったソフトが第3回電王戦でプロ棋士と対戦します。
1位 (初代電王)ponanza
2位 ツツカナ
3位 YSS
4位 やねうら王
5位 習甦
全棋譜も電王将棋トーナメント公式サイトにアップされています。

1・2・5位は第2回電王戦でもプロと対戦した強豪ソフト。
ponanzaとツツカナは力が抜けていて、さらに21戦全勝だったponanzaは相当の実力です。
習甦は予選絶不調で、そこから巻き返したのはさすがの実力といえます。

3・4位は戦略や工夫で勝ち上がったソフト。開発者の方の力量で順位を上げた感じです。
YSSは古参ソフトで、非Bonanzaというところに心意気を感じます。(評価関数はBonanzaメソッドを使っているとコメントでご指摘いただきました)。
やねうら王は序盤作戦や時間の使い方など、あまり重要視されていなかった手法で上位進出を果たしました。

3日間通じての印象として5位までに入ったソフトの実力は高く、第2回に続いてプロ棋士側も厳しい戦いを強いられそうです。

優勝候補と目されたBonanzaは決勝トーナメントで2連敗して敗退。大会通じていまひとつ冴えがありませんでした。
5位決定戦1回戦でAperyに負けた時、波乱という言われ方でしたが、昨日とりあげた将棋も総合的にAperyのほうが実力は上かもと感じていたので驚きはありませんでした。
ちなみにそのことをある開発者の方に話したところ、何故か驚かれました。
コンピュータ将棋のレーティングがAperyのほうが上で、それを知らない私が言ったからだそうですが、将棋を見る目は多少あるのです(笑)

ponanza、ツツカナと若い開発者が1・2位を占めたこと、新しい開発者がジャイアントキリングを起こし、しかも新しい技術開発を全員に呼び掛けていたこと。
なにより新しいスポンサーがコンピュータ将棋に進出したこと。
これらはコンピュータ将棋が新しい局面に突入しつつあることを示しているのかもしれません。

今大会は、ハードを統一することで開発者の工夫や知恵を競い合う、という趣旨がきちんと活かされたと思います。クラスタ化でハードを強化してソフトを強くするというのも一つの道ですし、限られたリソースでいかに勝負するかというのを競うのもまた一つの道でしょう。


ところでコンピュータ将棋との共存共栄は電王戦の一つのテーマであり、私もずっと心にとどめていること。
3日間じっくりソフトの将棋を見て、開発者と語り合うことで、一つ思いついたことがあります。
それはコンピュータ将棋を強くするやり方を人間に応用できないかというもの。

分かりやすい例でいえば、コンピュータ将棋はプロの棋譜を学習していますが、それは多くの棋譜並べをして定跡を覚えるのとほぼ同義です。
これは既にやっていること。
3駒関係(興味ある方はBonanzaのwikiで)は活かせないものか。
玉と飛と角の3つの駒がどこにいるとバランスがいいかとか、銀の退路に歩があるとマイナスとか。

その他色々方法があり、そのまま人間には適用できなくとも、工夫次第で今までに無い効率的な学習方法が生まれるかもしれません。
今後行う指導に色々採用していき、効果の高いものは発表していこうと思います。


実り多き3日間を振り返りました。
電王戦のプロ棋士との対戦は来年の3〜4月、それまでにも12月頃にイベントが予定されているようです。
今後もご注目ください。


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 19:01| Comment(7) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月06日

将棋電王トーナメント名局集

コンピュータ将棋はときに度肝を抜いたり常識を超える手を指すことがあり、そこに魅力と将棋の深さを感じます。
今日は大会のキーとなった将棋から名局を簡単にみていきます。


オープニングマッチとなった予選リーグ1回戦Bonanza―Apery戦。
双方10秒将棋での戦いが続いています。△3三歩と後手のAperyが打ったところ。


2013.11.6電王トーナメント1.gif


詰めろを回避しただけと思いきや、とんだ毒まんじゅう。
▲3三同角成で詰めろを継続しようとすると△9五桂以下長手数の詰みでトン死します。
そこで先手は▲3五角と詰めろを継続し、以下△5三金打▲6二金という手順で先手が勝ち切りました。
10秒将棋とは思えないレベルの高い手順でした。


予選リーグ最終戦では結果的に4位(シード権獲得の最後の枠)を争う直接対決となったやねうら王―Apery戦が興味深い一戦。
やねうら王の持ち味である「やね裏定跡(詳しくは開発者のブログより)」にAperyが引っかかり、角換わりの富岡流(プロ間で詰みまで研究されている有名な定跡)で一気に終局。
コンピュータ将棋は定跡では1秒で指すので、まさに秒殺でした。
結果的にこの星が両ソフトの運命を大きく左右し、やねうら王は4位入賞、Aperyは5位決定戦で敗れて惜しくも入賞を逃してしまいました。
それにしてもコンピュータ将棋でこういう将棋が表れるとは驚きました。


決勝トーナメント2回戦のツツカナ―Aprey戦では、ツツカナが人間のような時間の使い方を見せました。


2013.11.6電王トーナメント2.gif
圭=成桂 杏=成香


▲6二桂成自体は普通の手ですが、この手に約15分使っています。これはコンピュータ将棋としては異例の大長考。しかも残り20分(切れ負けなので0になったら即負け)からの大長考は、トラブルではないかと会場はざわつき、立会人としても肝を冷やしました。
ツツカナはこの長考で全てを読み切り、文字通り全ての手を読んでいるので以下は全て1秒指し。今までに無い試みに会場ではツツカナの開発者に称賛の声が送られていました。


決勝トーナメント5位決定戦1回戦習甦―AWAKE戦ではザ・コンピュータ将棋という手が。


2013.11.6電王トーナメント3.gif


▲2四銀と3五から歩頭に進んだところ。99%成立しない類の攻めですが、この場合▲7一角と▲4一角の筋があることや自玉が堅いことで成立していたかもしれません。
今大会は凶暴な攻めを見せていた習甦。予選では裏目に出ていましたが、決勝トーナメントではそれがいい方に出ていたようでした。第2回に続いての登場でプロ棋士へのリベンジなるでしょうか。


決勝のponanza―ツツカナ戦は変則的な序盤戦から居飛車―振り飛車穴熊に。穴熊のponanzaが猛攻をしかけ、ツツカナが受ける展開。


2013.11.6電王トーナメント4.gif


△5六歩は驚きの一手。銀取りを放置して次に成ることの出来ない垂れ歩。この歩は結果としてと金となり、先手陣を崩壊に導きました。
人間には、特にこのプレッシャーのかかる決勝という舞台ということもあり、指せる人はいないであろう好手(たぶん)でした。
決勝は専門誌など報道もあるかと思いますのでこのくらいで。


面白さを少しでも感じていただければ嬉しいです。
他にも面白い将棋が多く、もっと世の中に出していきたいと思います。

明日は3日間の総括とコンピュータ将棋との今後について書く予定です。


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 10:53| Comment(1) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月05日

将棋電王トーナメント終わる

3日間にわたった将棋電王トーナメント、無事に終了しました。
今回は大会の立会人として携わっただけに、まずはホッと一息というところです。
ずっと将棋を観て、コンピュータ関係の新しい知識にも多く触れ、知的好奇心が刺激されすぎたのか、頭が対局後のように冴えていて、夜中に目が覚めてしまいました。
大会で想像以上に体力を消耗し、今日の午前中は休養にあてることに。

まだぼーっとしていますが、そんな3日間を、3日間にわたって書こうと思います。
まずは立会人として。


初めての大会、そして18チームものコンピュータ将棋ソフトが出場したとあって、思っていた以上に色々なことがありました。立会人として難しい裁定をくだす場面も多く、それは出場者にとって非情な判断になるケースもあります。
開発者の方が手塩にかけて育ててきたソフトが、実力で負けるならともかくトラブルで負けを認めざるを得ない時、どんな心境か想像に難くありません。それでも皆さんとても潔く、私としては助かりました。それは将棋へのリスペクトというものが念頭にあるからでしょうか。
それにしてもコンピュータ将棋の大会は、バグやトラブルといったものとの戦いであることも感じました。何事もなく一局を終えることが開発者にとって大きな喜びであるのでしょう。

出場者の方々とコミュニケーションをとる時間も多くありました。ある程度知識は得ていっても、やはり実際にお話するほうが何倍も理解が早くなります。
おかげで一層コンピュータ将棋の知識も深くなりました。
今大会は出場者の方が期間中にもブログを書いており、勉強しつつ参加できたのも大きかったかと。
電王戦トーナメント本戦 2日目 やねうら王特設ページ

このブログの執筆者はタイトルにもある「やねうら王」というソフトで参加し、4位入賞、電王戦でプロ棋士と対戦することになりました。
この方は放送をご覧いただいた方はご存じでしょうが賑やかで楽しい方で、私も色々と教わりました。

大会を通じて、開発者の皆さんがとても楽しそうで、厳しい勝負の中に笑顔が絶えませんでした。視聴者の方にも好評だったようですし、まずは成功裏に終わったとみて良さそうです。
運営に携わったものとして、それに勝る喜びはありません。

私自身、プログラミングやプログラマーに強い興味があり、仕組みを知ったりお話を伺うことがとても楽しいです。大会を通じてそれを再認識しました。


明日は印象に残った一手、明後日はプロ棋士と戦うソフトとコンピュータ将棋とのこれからについて書こうかと思います。


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 17:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月02日

電王戦総括 「将棋界は何と戦っていたのか」

「俺たちは、何と戦っているんだ?」
これは大好きな『相棒』の映画最新作の副題です。

電王戦が終わってから10日間、この戦いの本質というものをずっと考えていました。
人間とコンピューターの戦い、その戦いのみが本質とは思えません。
もっと本質的なものがあったから、記憶に残る素晴らしいイベントになったはず。
コンピューターではなければ、将棋界は何と戦っていたのでしょうか。


各対局者の終局直後の姿と言葉には、引き込まれるものがありました。
一生懸命戦う棋士の美しさを感じていただいたと思います。
この電王戦に刺激を受けた棋士関係者も多いでしょう。私も勿論その一人です。

この国の情報科学としては偉大な一歩。ponanzaの山本一成さんが言われていました。
互いに素晴らしい内容の将棋を指したからこそ、偉大な一歩が生まれたのでしょう。
将棋が社会の役に立つ、素晴らしいことです。

将棋なんかじゃなくてもっと他のことに使え。とあるテレビ番組で電王戦についてコメンテーターが心ないことを言っていました。
批判されたり誤解されたり、色々あります。
それは将棋が、そしてコンピューターがすごい強くなったことが幅広く知られた証です。


電王戦第5局PV(リンク先は完全版)の中で、故米長永世棋聖のこういうセリフがありました。
「ファンに喜んでもらえるかどうか?」
これを思い出したとき、戦いの本質が見えました。

今までの将棋ファンに、新しい将棋ファンに、喜んでもらえるのかという戦いだったのです。
喜んでもらうのは、自己満足に陥りやすいこと。人ひとりをちゃんと喜ばせるのだって大変。
だから戦いなのです。そして今回は勝ったはずです。
ドワンゴ社はじめ周りの支えが大きかったこと、そして将棋界が今まで培ってきたものが出せたことが勝因でした。

将棋界にとってこの戦いは永遠です。
時代の流れが早い現代では、勝敗はすぐに入れ替わってしまいます。
今は主に名人戦という舞台で、ファンに喜んでもらう戦いが行われています。

戦いを勝ち抜くために、将棋界も色々と模索をして、進化していかないといけません。
方向性の一つとして、コンピューターを将棋界としていい意味で積極的に取り入れたいです。
いいと思えば取り入れる。それは勝負で勝ち続けるものの常でしょう。
私はこの分野をもっともっと深く掘り下げていきたいです。


最後に電王戦エンディングPVを。
それも含め全ての動画がまとまっているページも紹介しておきます。
将棋電王戦チャンネル


「ファンに喜んでもらえるかどうか?」
それを常に問いかけながら、出場した対局者のように私も一生懸命やっていきます。


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 07:54| Comment(13) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月24日

電王戦第5局のGPS将棋の読み筋を精査してみました

GPS将棋は自分の読み筋の一部をHPで公開しています。
GPS将棋の電王戦のページ

今回の電王戦ではコンピューターの指す将棋を間近で見て検討したことにより、勉強になることが多くありました。
局面を広く読み、その読みの量から繰り出される手は、将棋の深淵を見せられることもあります。
私自身もコンピューター将棋にはかなり影響を受けていますが、一層その色が濃くなったように思います。

そこでせっかく読み筋が公開されているので、勉強も兼ねて精査してみました。
プロなんだから盤面を〜という片上六段の言葉(電王戦第3局コメント欄参照)がありましたが、この試みは
「プロなんだから読み筋を精査して判断してみよう」
というものです。

読み筋といっても一部(じゃないと数億になる)ですが、それでも多くのことが見えてきました。
今回はその一端を紹介します。

図は53手目に▲7六銀打としたところ


2013.4.24精査図1.gif


▲7六銀打は昼食休憩明けすぐの手。
事前にGPS将棋の読み筋が伝えられていて、▲7六銀打には△5二飛の予定と聞いていました。
この△5二飛は感触の良い手で、控室の棋士は感心していました。
しかし実戦は△7二飛。GPSは手を変えてきたのです。
それが何故なのかハッキリしなかったのですが、△5二飛には嫌な手があったのだろうと言われていました。

その△5二飛に嫌な手というのが今回の精査で見えてきました。
それが驚きの順なのです。


2013.4.24精査図2.gif


この△5二飛に▲1五歩△同歩▲1三歩△同香を嫌がっていました。


2013.4.24精査図3.gif


この順以外なら△5二飛で自分が僅かに良しと読んでいます。
これだけでは真意がはかりづらいので、自分のPC(中くらいのスペック)のGPSFishに後を託しました。
すると以下
▲同角成!△同玉▲6五香△4二角▲6三香成



2013.4.24精査図4.gif
杏=成香


これで互角という検討でした。1台でこのスペックでもかなり時間をかけたので、そう結論に差はないでしょう。
さすがにこの図は後手優勢だと思うのですが、どうなんでしょうか。プロの意見も聞いてみたいところ。

もしこの図が後手優勢なら、翻って第2図の△5二飛に▲1五歩は疑問です(この攻め以外は突き捨ての意味が薄い)。
△5二飛に先手の有力手は見えてきません。△7二飛は感触の悪い手という評判でした。
つまりGPS将棋は△5二飛という好手が見えていながら、変な手を気にして△7二飛という疑問手を指した、ということです。


こういったことは他にもあり、精査すると読み筋が完璧とは思えませんでした。
ただ考えづらい手順が入っていて、なるほどと思わされることも多くあります。
今回のことも、実は▲6三香成の局面が互角で、私の判断が間違えているということも考えられます。
それはそれで新しい発見です。


精査した結果を一部発表したのは、イメージだけで判断されている風潮に一石を投じたかったから。
1秒間に約2.7億手読むGPS将棋でも、将棋は奥深く難しいのです。
それを理解していただきたくて書きました。


読み筋を精査していくことは、第3回電王戦が開催されるなら盛んになるでしょう。
これまでは現役棋士とコンピューター将棋の真剣勝負の場がなく、研究が出来ませんでした。
この作業を真剣に取り組むと、コンピューター将棋の力というものが正確に見えてくるのではないでしょうか。


個人的な総括や、全体の総括も近日中に書こうと思います。


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 13:37| Comment(9) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月21日

電王戦第5局

電王戦第5局三浦八段―GPS将棋戦はGPS将棋が勝ち、全対局が終了しました。
「第2回将棋電王戦」最終第5局、3勝1敗1持将棋でコンピュータの勝利!(将棋連盟のお知らせ)

相矢倉からGPS将棋がやや無理気味な攻めを敢行。
この日の三浦八段はプレッシャーからか精彩を欠いていたように思います。
その攻めを中途半端に受け止めにいき、粘りもなく土俵を割る形となりました。
第1局と似た形で、今度は人間側に悪い目が出た格好です。

プロ側が負け越したという事実は、世間的にもかなり報道されています。
これによって将棋界が世間にそっぽを向かれてしまうようであれば、それは将棋界の今までの取り組みが間違っていたということ。
以前の連載にも書いたように、私はその点は楽観的です。
第2回電王戦4 〜本番の対局について〜
とはいえどうなるか分かりません。今は試練の時でしょうか。
将棋連盟が一丸となって団体戦のごとく進んでいくよりないと思います。

今は長い戦いが終わってホッとしています。
イベントの熱気が冷めるようなトラブルがなかったことは、本当に良かったです。
濃い日々が終わり、少し気持ちを休めて過ごしていきたいと思います。

昨日は記者会見終了後に盛大な打ち上げがあり、その後関係者だけの二次会へ。
疲れが出てしまい、二次会を途中で失礼して夜中に帰ってきました。
第2・3局は終局後に濃い感想戦もあり、毎週のように飲んでいた気がします。
そういうことも含め、貴重な時間でした。自分にとって刺激になることが多くありました。

書きたいこともあるので、また改めて振り返っていく予定です。
今週は楽しみなイベントや仕事もあり、わりと気持ちの楽な一週間になりそうです。


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 16:23| Comment(2) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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