さて今日はNHK杯の行方八段戦。
こちらはTV棋戦の関係で記事が少し飛びます。
6/24 6/25(対局日)
7/8(放映日)
今こうして読んでみると、改めて皆さんのコメント、応援に励まされます。ご覧になった方は内容はお分かりの事と思いますが、もし放映をご覧になっていない方は是非NHK講座9月号でご確認を。
放映でも出ていたように、行方八段とは三段時代の8年位前から将棋を教わっており、練習将棋だけでも200局以上指しています。三段時代苦しんでいた時にもずっと教えていただき、はっぱをかけられていたのは四段昇段の一つの要因でした。三段で高齢(といっても20代前半)だと普通そういう人(当時の行方八段は低段ながら既にトップに近いところにいた)に声をかけられる事は普通考えにくいところ。でも行方八段にはずっと変わらず将棋を教えていただき、それがある種の励みにもなっていました。そしてもちろん勉強にもなりました。
プライベートでも仲は良く、飲みに行った事は数知れず。LIVEも5,6回は一緒に行ってるような気がします。
そんな仲ですから当然手の内は知り尽くされています。振り駒で私が後手となったのでゴキゲン中飛車は予想されていたところでしょう。本局は遠山流でしたが、その中にも新手を混ぜて相手の狙いを外しにかかりました。その手の成否は微妙ながら意表を突いた事は確か。この日の為にとっておいた手ですからそれくらいの効果が無いとつまりません。
居飛車が仕掛けて迎えた第1図。次の手が我ながら良い手でした。解説の都合上、先後逆になっていますので▲が私です。

△65桂と跳ねてきたところ。思わず▲84歩と指したくなるところですがこれは△81飛と引かれて意外と後続が難しい。△73飛なら▲74歩△同銀▲83歩成で話が上手いのですが…
ここで▲74歩と垂らしたのが会心の一手。63銀型なだけに▲73歩成が強烈。後手はやむを得ず△72歩と受けましたが、そこでおもむろに▲84歩△81飛をきめて▲66歩と突いて桂得確定。△72歩と打っているので△77歩が打てない仕組み。
これで桂得となり有利となるも、すぐに間違えました。

今△44歩と突いたところ。桂損をしているのにじっとされて手が見えなくなりました。ここで▲65桂と跳ねたのが焦りからきた悪手。早く勝ちたいという気持ちが出てしまっています。すかさず△85歩と打たれて飛び上がりました。角を逃げると銀が只。うっかりして青ざめました。この辺り、悪いながら崩れてもらえないのがA級の強さですね。
△85歩がが生じたのが▲65桂の罪。ここは▲56飛と落ち着いて指し、以下△43金右▲76飛としてから▲65桂を狙えば優勢でした。焦っちゃいけません。
しかし本譜▲65桂△85歩▲53歩に△同金は救われました。△86歩▲52歩成△75角と踏み込まれたら逆に不利でした。本譜はバランスの取れた進行に。

後手がじっと△66歩と角道を止めたところ。実戦はここで▲53歩と指したもののあまり良い手ではありませんでした。恐らく最善手は終局後解説の鈴木八段に教わった▲64銀。これには△86角と覗いてきますが▲57飛とかわしておきます。
この順は手順に飛取りになるのでとても指しにくい、どころか考えもしなかった順。しかし後で色々考えた結果、どうもこれが一番良かったようです。思いもつかないところに実力の無さを感じます。
しかしこの将棋はどちらかが間違えるとどちらかがお付き合いをするという流れ(早指しにはありがち)で、再びこちらに流れが来たのが第4図

今後手が△87歩成としました。この局面が最も悔やまれるところ。ここで▲55桂という手を随分前から狙っていました(NHK講座の観戦記ではちょっと局面が違っています汗)。これは△同歩▲同飛と進めての十字飛車が狙い。こうなると飛が働いて後手玉の寄りが見えてきます。かといって△88と、では▲43桂成△同金▲53と、と進めてこれは本譜より遥かに良く、形勢も少し有利でした。
分かっていたのに打たなかったのは▲55桂に△42金引という手が咄嗟に見えたから。しかし結果的にはこの方が良く、ここでのミスは痛かった。そしてそれ以上に…

第4図から▲53と△88と▲43と△同金と進んだ図。ここで▲53金が敗着。当然▲52銀とするべきで、△42金▲54飛の局面がスピードが遅くてあまり気乗りがしなかったのですが、それでもそう進めば勝負形。本譜は全然ダメにして、最後△92角の好手を食らってしまいました。ここでも悪手を指した原因は焦り。緊張はあまりしていなかったのですが、やはり少し精神的に余裕が無かったようです。
そしてここでのミスは第4図で△55桂を逃した事も要因の一つ。自分の好きな手を指さなかった事で勝手に動揺してしまいました。将棋は人間同士の戦いなので、最善手を重ねる事も大切ながら自分のポリシーも大切。そうした個性的な一手が勝利につながる事も多いはず。そういう手を指せなかった事で集中が少し切れて本譜の展開になってしまいました。
というわけで残念な逆転負け。逆転とはいっても優勢だったのは第2図だけで後はずっと難しい局面が続いていました。強豪相手にまずまず戦えたとは思いますが、第4図で▲55桂を逃したのは屈辱的。緊張していなかったとはいえ、やはりどこか余裕の無い指し回しでした。
今回良い経験が(苦い経験とも言う)出来たので、来年こそは1回戦突破を目指します。おっとその前に厳しい予選を抜けなければ(笑)
本局は、負け惜しみを言えば今までお世話になったお礼ともいえますかね。私としては、行方八段が本気を出さざるを得ない状況で戦うのが目標の一つ。どんな棋戦でも良いので、もっと上の方で、負けた方が倒れこむ位の勝負をしたいものです。
案外良く言われるのが「惜しい逆転負けだった」という事ですが、実はそうでも無かったのですね。次紹介する将棋に比べればこの将棋は可愛いものでした…この将棋を「次」に生かせないのが本当の甘さなのですが、それはまた来週の火曜日くらいに。
それではまた