2008年02月15日

村山五段戦

 一昨日は振り駒で後手番に。ゴキゲン中飛車に構え、村山五段は予想通り角交換に。

 ここまでは予定通りでしたが、序盤で思いもかけない工夫を指され、午前中からもだえる事に。大した事は無いところで大長考。贅沢な時間の使い方です。

 さてそこは飛ばし、実戦はかなり長い序盤戦に。夕食休憩時にも駒がぶつからない渋い展開でした。
 ただ夕食休憩前に何気なく指した手を、後で激しく後悔する事になるとは。。
 解説の都合上先手▲が私です。


村山戦 20.2.13@.gif


 手が詰まり気味の局面。ここで△44角のラインから外れようと▲98香と上がったのが良くなかった。前に藤井九段の言葉にもあったように、やはり持久戦でこの香は上がらない方が良いようです。
 プロ同士ではこの僅かなところが響いてくるのですね。この将棋で身を持って体感しました。

 戦いが始まって、少し悪いながらも大変か、と思っていたのですが、途中で村山五段に非常に良い手を指され、やはり苦しさを実感。面白い手なのですが、週将に取り上げていただけそうなので、そこは飛ばして第2図に行きます。


村山戦 20.2.13A.gif


 ▲68歩と受けたところ。駒割りは角と金桂の二枚換え。ただ玉形と大駒の働きがあちらの方が良いので、苦しいとは思いました。
 ここで△76角が分かっていたものの痛すぎる一手。49の金を玉頭の位と連動させて狙うと共に、△98角成が抜群の味なのですね。
 ここに至って▲98香が響いてきました。結果論と言うなかれ。この将棋は他の変化等でもずっとこの香が響いていたのです。

 とはいえ、こういうのがモロに出ては勝てないとしたもの。実際△76角と打たれて大差の局面。以下粘り、かなり追い上げたものの、最後はしっかり余されてしまいました。

 竜王戦は非常に残念ですが、裏街道もあるので、めげずに昇級目指して頑張っていきます。

 次の対局は来週の木曜日。憧れのA級の先生とです。


 それではまた
posted by 遠山雄亮 at 10:56| Comment(3) | TrackBack(1) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月06日

淡路九段戦

 後手番でゴキゲン中飛車へ。順位戦の前局は超急戦での佐藤流でしたが、今回は持久戦バージョンの佐藤流を採用しました。

 作戦的にはまずまず上手くいっていたのですが、警戒心が薄すぎました。解説の都合上、先後逆になっています。先手▲が私です。


淡路戦 20.2.5@.gif


 今△43角と筋違い角を打ってきました。これは76の歩を掠め取ってその後7筋を伸ばしてこようというもの。
 この筋は分かりやすい分、ちゃんと指せばこちらが良いイメージを持っていました。ところが本局の場合はこの角が痛かった。というよりはこの後の展開に誤算がありました。

 進んで第2図。角で歩を取ったところ。


淡路戦 20.2.5A.gif


 ここはやや悪い手応えだったので、局面を複雑にしたつもりでした。しかし、やりにくいと見ていた△45銀を決行されこれが厳しかった。▲同銀なら△67角成が両取りに。
 という事で▲同金ですが、△33桂が怖いながら踏み込んだ手。これで金の行き場がありません。


淡路戦 20.2.5B.gif


 ただこちらも手が広いところ。そしてここで▲74歩と打ったのですが、これで将棋を壊してしまったようです。もうちょっと突っ込んで読まなければいけない局面でした。

 これは銀を遊ばせて、という意味を含んでいたのですが、進んで第4図


淡路戦 20.2.5C.gif


 角取りに▲68桂と打った手に△65桂と跳んできたのが好手で参りました。これを夕食休憩直後に指され、暗い気分に。
 何故好手かというと、後手は角を67に成るのが急所なのです。そこでこの△65桂。▲同桂なら△同銀とし、▲同銀なら取らずに△67角成が好手で先手陣は崩壊します。▲同桂△同銀に▲76桂だと△36桂▲37玉△56銀と進めていきなり受けの無い格好になります。

 この手順が発生したのは、第3図で自ら銀を出させたから。この筋が全く見えておらず、まだまだ大変だと思っていたのですからおめでたいものです。

 以下は粘るも全く見所無く完敗。良い所が一つも無い将棋で、自分自身にガッカリしました。

 今期は本当に急所でよく負けますが、これも実力不足の所以でしょう。実力が足りない事もどこが足りないかも、自分自身ではよく分かっているつもりなので、また一から鍛えなおしたいと思います。
 元々最初から一筋縄ではいかない将棋人生ですから、ここでめげず、腐らず、一歩ずつ前進してきます。上がって当然と思われる位の感じで上がらなければ上のクラスに行っても厳しいだけですから、また少しずつ実力を付けてチャンスを伺おうと思います。
 順位戦は最終戦も、全力で指して、良い形で終われるよう頑張ります。

 C級2組は1敗の4人中3人が敗れるという一日だったようです。1敗の村山五段が昇級決定で、あとは2敗の順位上位陣の争いに。こういう展開だと順位が大きいですね。私も一応可能性があるようです。

 対局後は珍しく飲みに。対局の後は体調的にあまりお酒を飲めないので、大体真っ直ぐ帰るのですが、今日はどうしても飲みたい気分でした。仲の良い棋士仲間と色々話をして、少し気持ちを落ち着けて家に帰ってきました。
 そして区切りを付けるため、家に帰ってきてからこの記事を書いています。これでこの事は終わりとし、また前を見て歩んでいきます。


 それではまた

 
posted by 遠山雄亮 at 04:03| Comment(8) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月31日

阿久津六段戦

 振り駒で後手番になり、ゴキゲン中飛車へ。今月は4局とも中飛車の将棋に。今自分の中でテーマの多い戦形なのと、「ある」事情があって今月はなるべく中飛車を指そうと思っていました。それは明後日に。

 さて先手は▲78金戦法を選択。


阿久津戦 20.1.31@.gif


 ちょっと定跡講座。今▲78金と上がったところ。この手の意味は、角に紐を付けていつでも▲24歩から飛先を交換出来るようにしたもの。その分先手は若干駒組みがしづらくなります。先月の対千葉五段戦も同じ形でした。



 早いうちから戦いになりました。ここからは実戦の解説なので先後を入れ替えます。先手▲が私です。


阿久津戦 20.1.31A.gif


 今▲66角と上がったところ。こちらは▲77銀〜▲39角〜▲56飛〜▲86飛が理想。後手は駒が前に出ていないので阻止しにくい形。
 そこでいきなり△同飛と来ました。さすがに驚きましたが、平然と▲同歩。そこで角をどこかに打つのかと思いきや、じっと△33桂としたのが第3図


阿久津戦 20.1.31B.gif


 力を溜めてきました。次に△45桂と来てもそう簡単に突破出来ません。ただこちらも有効な手が難しいところで、手を渡してきたと言えます。
 ここで長考して▲26歩と角にプレッシャーをかけました。一見して良さそうな手で手応えもありました。
 ここで△45桂なら▲56飛打として


阿久津戦 20.1.31C.gif


 これ以上突破出来ません。次は何でも▲46歩です。

 実戦は第3図で△69角と意表の一手。これは▲68飛で角が詰むので軽視していたのですが、△78角成▲同飛△57角成とされると目標の駒に逃げられた格好に。▲26歩は角にプレッシャーをかけに行った半面、自玉を弱めてしまっています。それを突いてきました。
 ただそこで▲83角から馬を作るのが大きいのでまずまずかと。

 整理すると、第4図から△69角▲68飛△78角成▲同飛△57角成▲83角。そこから△51金▲72角成△67馬▲79銀△71金で第5図


阿久津戦 20.1.31D.gif


 この金は打ちにくいかと思ったのですが、▲82飛がかなり厳しいのでやむを得ないところ。以下▲83馬△45桂(これが後手の狙いで桂成りが受からない)▲65馬△57桂成▲54歩△同歩▲同馬△53銀左で第6図


阿久津戦 20.1.31E.gif


 駒割りは飛金交換で駒得。しかも後手は金を打ってしまっています。桂には成られましたが、相手も玉側の桂が跳ねてきているで、痛みもそれほどではないかと。この局面はだいぶ前からの想定局面で、まあまあなのかと思っていました。
 ところがそれが大違い。ここに至って気付かされました。悪いのです。なんで悪いのかは言葉にしづらいのですが、感想戦での結論もやはりこちらが悪いという事。理屈ではなく、とにかく悪いのです。

 では何が悪かったのかというと、どうやら第3図での▲26歩。進んでみるとこの傷が痛いのです。△24歩から逆襲の筋さえチラチラしています。
 この差を最後まで詰められず、ここからは粘るも敗れました。

 この将棋は▲26歩が全て。この手を良い手だと思って指したのだからお話になりません。相手の△69角〜△57角成が気付きづらい良い構想だったとはいえ、▲26歩は「浮かばない方が良い手」でした。▲83飛から竜を作ってゆっくり指して一局という結論でした。本筋はそうですよね。

 残念ながら連勝は10でストップ。今期最高の13は遠かったです。終局後13連勝者の嬉しそうなこと。一層悔しさが増しました。
 ただ将棋としては実力不足を露呈する内容で、良い勉強になりました。悔しい敗戦ですが、これをしっかり糧にし、気持ちを切り替えて勝負将棋の続く2月を頑張りたいと思います。また、もう一度ある阿久津六段との対戦では借りを返したいところです。

 忙しいのも明日まで。明日はA級の一斉対局ですが、体調がイマイチなので、自宅で観戦も有力なところ。とりあえず明日の仕事が終わったら考えようと思います。
 A級の話等はまた明日書きます。


 それではまた
 
posted by 遠山雄亮 at 22:55| Comment(8) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月29日

神谷七段戦

 遅ればせながら神谷七段との将棋を解説します。

 先手で中飛車にする、塚田九段戦と似たような展開。序盤何気なく指した手を咎めに来られ、とんでもない戦いになりました。


神谷戦 20.1.25@.gif


 今▲53角と打ったところ。古い表現を借りれば「縁台将棋のよう」でしょうか。香損していますが、こちらも全力で中央突破を目指しています。
 厳密には無理かもしれませんが、実戦の△64角▲62角成△同金▲71銀△72飛▲62銀成△同飛▲53金という手順は、「無理が通れば道理が引っ込む」で、少し良くなりました。


神谷戦 20.1.25A.gif


 感想戦で観戦に来られた棋士にも苦笑される強引極まりない攻め。でも気が付けば有利に。△同香▲同歩成△82飛がきけば良いのですが、そこで▲85香が痛打になります。
 実戦は△82飛▲63金△86角▲53歩成で突破に成功。「53のと金に負けなし」ですからね。中飛車はこうやってガリガリ行くのが良いんです。アマチュア同士なら必ず攻めてる方が勝ちます!私も有利になりました。
 ただ優勢だと思っていたのは勘違いで、実際は少し良い位。その形勢判断の誤りからミスを出します。
 ところが神谷七段もかなり不利だと思っていたとの事で、やはりその判断からミスが出ます。
 このやり取りは後からミスを出した神谷七段の罪が大きかったようで、本当に優勢に。

 しかしこちらもミスを出して迎えた第3図


神谷戦 20.1.25B.gif


 夕食休憩の局面。駒得ですが▲91金が遊んでいるので、実際は大した駒得ではありません。△31金と△32金はどちらも打ったもの。後手の粘り具合が良く出ています。おかげで後手玉は鉄壁です。
 そしてこの△89飛が思いのほか受けにくい。こちらはかなり薄い玉形。かなり憂鬱な気分でした。▲59香が自然ですが△69銀がうるさい。▲79香も形ですが△98とを間に合わされそうです。そこで▲49香というあまり見た事の無い受け方をしました。
 あの玉形を崩すには端攻めしかないので、それまで辛抱です。そして


神谷戦 20.1.25C.gif


 待望の第一歩。こちらは不安定ながら後手も持ち駒が少ないため、間に合いそうな感じです。△64歩と角を追い払いに来ましたが、▲62飛成が遊び駒を使う味の良い手。この辺から第一感を大切に指すようにして、バシバシ指していました。

 そして第5図


神谷戦 20.1.25D.gif


 待望の第二歩。後手は△21玉とかわしましたが、それでも▲14歩△同歩▲13歩△同香▲46角が急所の攻め。△22金上(寄も)なら▲62竜から今度は横攻めで行きます。後手の持ち駒に角しかないのも急所です。
 実戦は△35角と受けてきましたが、▲同竜△同歩▲同角


神谷戦 20.1.25E.gif


 しつこく端に行きます。△22金上なら空いたスペースに▲34桂が厳しい一着。2枚持ってますから破壊力も抜群です。
 △68成銀と来ましたが、▲同金だと△24銀で粘られるので、構わず▲13角成△22金上▲34桂と攻め立てて投了となりました。以下△13金なら▲22銀で詰みですし、受けても一手一手となります。

 固かった玉形も端攻めが急所で、攻めだしたらあっという間に崩壊しました。やはり囲いの急所を突くのが攻めるコツですね。

 スタートは稀に見る大乱戦。調べてみたのですが、第1図のような単純な攻めをしたプロはほとんどいないようです(笑)。 
 でも良くなったのですから、結果オーライ。その後きっちり勝ちきれないのはいつもの課題ですが、難しくなってからシャキッとする持ち味(?)も出せました。

 これで王座戦は二次決勝に進出。決勝の相手は藤井九段です。昔から憧れていた振り飛車党の教祖。今から対局が楽しみです。


 それではまた

 
posted by 遠山雄亮 at 22:07| Comment(6) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月25日

怪勝

 振り駒で先手に。やはり去年の反動か(?)振り駒連勝です。
 前回あまり上手くいかなかったので、先手中飛車に再チャレンジ。しかしコツがつかめていないのか、またしても失敗。ところが相手のミスにも助けられて急に優勢に。
 がしかし、そこでまたもミスを犯し、夕食休憩時は辛い気持ちでした。

 再開後、そこまであまりにも読みが噛み合わないので、時間も減ってきた事もあって、自分の第一感を信じて勢いを大事にして指す事に。
 それが功を奏したか、一瞬のチャンスをものにし、一気に投了に追い込みました。

 これで王座戦は本戦まであと一番。次はずっと憧れている振り飛車党の先輩棋士が相手で、今から楽しみです。

 それにしてもミスの多い一戦。見た事の無い戦いだっただけにやむを得ない部分もありますが、そうはいっても技術不足です。もっともっと強くならなくてはいけません。

 明日は朝早い時間から天童に行ってきます。なので明日は解説は無しという事になります。帰ってきてからも色々あり、また対局も木曜にあるので厳しいところですが、なるべく時間見つけて書こうと思います。


 それではまた
posted by 遠山雄亮 at 23:25| Comment(7) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月17日

糸谷四段戦

 遅くなりましたが糸谷四段戦を紹介。後手でゴキゲン中飛車に。糸谷流右玉かと思っていたら、なんと▲58金右を選択。こちらも踏み込んで午前10時半には激しくなりました。
 今日はこの超急戦について簡単におさらいを。


糸谷戦 20.1.15@.gif


 ゴキゲン中飛車の基本形。ここで▲58金右と上がるのが戦法の骨子。そこで△55歩と△62玉に分かれますが、△55歩と突くと激しくなります。
 以下▲24歩△同歩▲同飛△56歩▲同歩△88角成▲同銀△33角▲21飛成△88角成


糸谷戦 20.1.15A.gif


 いきなり竜と馬を作りあって銀桂交換に。そしてここで▲55桂が良い手。△62玉以外なら▲33角から馬を抜く狙いがあります。
 △62玉▲11竜と進んで、△54歩と打ったのが米長会長が「偉大なる悪手」と評した佐藤(康)新手。


糸谷戦 20.1.15B.gif


 これを本局で採用。勿論研究してありましたが、向こうも当然研究は十分なはず。ただ実戦例は▲渡辺竜王ー△佐藤棋聖の前期棋聖戦第4局しかないので、暗闇を歩いていくしかありません。それは向こうも一緒。
 ▲63桂成△同玉▲66香△72玉までは一本道ですが、そこから一気にスローペースになりました。何しろ道無き道なうえ、一つのミスが命取りになる超急戦。私も恐怖心を持って指していました。

 ここからは実戦の進行なので先後を逆にします。先手▲が私です。しばらく進んで夕食休憩がこちら。


糸谷戦 20.1.15C.gif


 △98飛と打って△78とを狙ってきました。ここで長考して▲58金左としたのが好手だったよう。以下△78とに▲33馬△42金直▲34馬と角に狙いをつけました。この時△57角成を防いでいるのが▲58金左の効能。△79角成では効果が薄いので▲48香の二段ロケットが間に合います。
 ▲34馬にそれでも△57角成には驚きましたが、▲同金△77と▲48香△67と、と進んで第5図


糸谷戦 20.1.15D.gif


 ここで▲同金と取ったのが最悪の一手。自戒をこめて図面にしました。第5図は実は勝勢に近い形勢で、自陣が一瞬頑丈なのを生かして▲43香成△同金直▲同馬△同金▲44歩(香では取れないが、利いているのは大きい)と攻めれば詰めろが続き、△57との暇は無く勝ちでした。
 ところが▲同金とノータイムで取ったのがヒドイ手。そこで△47銀が当然ながら厳しい一着。この手自体は考えていたものの、先に致命的な見落としがあり、正直呆れました。
 しかしここで踏み止まれたのが勝因。というかリードが予想以上に大きかったか。


糸谷戦 20.1.15E.gif


 進んで第6図。先手が△33桂としばってきた所。これは△48飛成▲同金△56竜と詰ます手を狙っています。

 この局面が午後10時半頃。戦いが始まったのは異常に早かったのですが、結局遅くなっています。ずっと緊張感ある局面が続き、疲れもありましたが、ここで良い手が指せました。
 ▲43香成と踏み込んだのが会心の一着。これで馬筋を通して△56竜を防いでいます。それより何よりこんな玉の近くでいきなり行って大丈夫なのか、という所ですが、もちろん読みきり。△同金直▲同桂成△同金に▲44歩と更に呼び込んで、これが詰めろ。実戦はそこで△95飛成と利かして詰めろをかけてきましたが、この瞬間に勝ちを確信し、珍しくちょっとドキドキしました。
 ▲52金△同玉▲43歩成△同玉▲34銀と進めて投了となりました。


糸谷戦 20.1.15F.gif


 以下は詰み。なのですが、ちょっと良い手があるので考えてください。後手は△52玉か△53玉と逃げます。まず△52玉の時の詰みを考えてください。その後△53玉の時の詰みを考えてください。その時3手後に上手い手があり、ちょっと手数は長いですが詰みになります。


 最新形を10代と戦うのは勇気も要りました。でも逃げていては何も得られないという一心で立ち向かい、そして勝てたのは大きな収穫でした。
 リーグ表が出来た時からずっと意識していた一戦。ほとんど同じ時期に棋士になり向こうは注目を浴びていましたから、こちらとしては直接対決で負けたくありませんでした。その気持ちがリーグ自体の好成績を引っ張ってきたともいえます。その一戦に勝って4番手。まだ自力ではないので、自然体で残り2番を頑張ろうと思います。これから2ヶ月、緊張の、でも充実の日々になりそうです。


 それではまた

posted by 遠山雄亮 at 22:08| Comment(7) | TrackBack(2) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月11日

塚田九段戦

 今日は朝、田辺忠幸さんの告別式に行ってきました。そこで偶然知ったのですが、私が一番最初に読み将棋を覚えた本は、この田辺忠幸さんの著作でした。正確には原田九段との共著です。
 これには驚きました。将棋界の為に尽力された田辺忠幸さんでしたが、ここにも田辺忠幸さんのおかげで将棋を覚えた棋士がいる事をお伝えしたいです。
 一度も観戦記を書いていただけなかったのと、酒席を共にする機会が非常に少なかったのが残念でなりません。
 改めてご冥福をお祈りいたします。

 その後もバタバタしていて、更新が遅くなりました。

 では昨日の将棋を。今日は最終盤の攻防にスポットを当てます。先手▲が私です。


塚田戦 20.1.10@.gif


 今△48角と打ってきたところ。もちろん▲同金なら△39角ですが、48には金か銀を打ってくるとばかり思っていたので驚きました。また攻めるなら△46桂かと思っていたのですが、更にスピードを上げてきました。
 次に△39角打▲18玉△49竜となると必至。また▲同金と取れば角が手に入りますが、△39角▲18玉△48角成とした手が詰めろなので、そこで相手玉を詰ます体勢になっていなくてはいけません。実際、▲33銀以下かなり際どいですが、若干詰まないようです。
 ただ先手玉は金さえ渡さなければなかなか詰まない形。何かありそうです。

 そこでここで貴重な残り時間をかなり費やし、好手を発見しました。それが▲22銀


塚田戦 20.1.10A.gif


 只捨てに只捨てで対抗しました。
 これは△同玉なら▲31銀△32玉に▲48金と取り、△39角▲18玉△48角成とした時に詰ましてしまおうというもの。


塚田戦 20.1.10B.gif


 実際ここから▲42銀成△同玉▲51角△32玉に▲31金が好手で詰みます。

 そこで実戦は▲22銀に△39角打▲18玉を決めてから△41桂と受けてきましたが、決め手を発見していました。それが▲51飛成


塚田戦 20.1.10C.gif


 受けがきかない事を確認してください。次は▲31金以下詰み。△24歩と脱走路を空けても、銀なら渡せるので▲21銀不成から一手一手。
 ちなみに角を手放さないで△53角と受けても、▲62銀が好手でやはり受けが難しそうです。

 実戦も△49竜に▲31金と打って投了されました。

 終盤は次の一手のような手で勝てて、調子の良さを感じました。こういう手に気付く、というかそこで腰が落とせるのは調子の良い証拠だと思います。この勢いで来週また頑張ります。

 昨日のA級順位戦は面白い将棋でしたね。終盤は受けの木村本領発揮か、という気もしましたが、捌きのアーティストが一刀両断しました。これで1敗が2人に。また残留争いも混戦になってきました。

 今日も順位戦が行われています。A級の谷川九段ー藤井九段戦とB級2組順位戦。
中継は名人戦棋譜速報


 それではまた
posted by 遠山雄亮 at 22:26| Comment(4) | TrackBack(1) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月28日

横山五段戦

 振り駒で後手となり、中飛車ゴキゲンに。そういえば今月は振り駒で全敗し、全局後手でゴキゲン中飛車を指しました。

 師走で慌しいので、簡単にポイントを。
 序盤は工夫が実って作戦勝ちに。仕掛けも上手く、順調にリードを広げていく展開。そして迎えた第1図。解説の都合上先後を逆にしてあります。私が先手▲です。


横山戦 19.12.26@.gif


 今△56歩と取ってきたところ。7〜8筋は誤植ではありません。と金と歩で飛を封じ込めるという珍しい形。後手陣は遊び駒だらけで、玉の固さも段違い。駒得でもあり、まさに必勝体勢。それにやや気が緩んで▲48銀としたのが大緩手。こちらは穴熊なのですから、当然▲43銀と攻め合うところ。同じ攻め合いでも▲69飛は△57歩成▲65飛に△23銀で案外大変。
 ▲43銀を△同金なら▲同馬が銀取りになっているのがミソ。△31桂なら▲32銀成△同玉▲44金△42銀と玉形を乱してから▲69飛と回れば一丁上がり、でした。
 本譜は▲48銀に△54銀が好手。自陣を引き締められ少し寄りが戻ってしまいました。

 その後はこちらの悪手もあり、更に形勢が急接近。さすがにまずいと思い、気を引き締めて、そこからは激戦に。残り時間がかなりあったのが幸いでした。

 そして迎えた第2図


横山戦 19.12.26A.gif


 ここではもはや良い勝負。遊んでいたはずの△73金は無くなり、飛もすっかり働き出しています。穴熊も随分弱体化し泣きたいところですが、ここで▲26歩と敵の打ちたい所(放置すると△26桂が厳しい)に打ったのが好手。もつれるとちゃんとした手を指せます。じゃあ優勢の時にちゃんとした手を指しなさい、というのは痛いところです。

 以下△44銀打に▲25歩△34金と拠点を奪い返してから▲64馬と逃げ、再び自信が出てきました。

 しかし勝負はもつれます。攻め合えば勝ちの局面で受けにまわったのがあまり良い手ではなく、完全に混戦に。お互い時間の無い中での叩きあいが続きます。
 そして迎えた第3図


横山戦 19.12.26B.gif


 もうぐちゃぐちゃです(笑)今後手が△38金と攻めてきたところ。▲23銀以下詰みそうですが、清算されて際どく詰みません。
 そこで開き直って▲35桂と打ったのが激戦に終止符を打つ決め手。これで23の地点に駒を足した事で受けがなくなり、またこの桂がいる事で先手玉がかなり詰みにくくなっています。
 実戦は△28金▲同玉△39銀から詰ましに来たものの、25に逃げ込んだ時が相当詰まない形なので、それを活かして逃げ切りました。
 総手数170手。お互い秒読みが延々と続く大激戦でした。

 いったん大優勢になりながら、気持ちの緩みから追い上げられ、そこは反省しきり。
 逆に追い上げられてからは良い手を指せてそこは収穫。
 1局で2局分くらい指した感じで、終局後は疲労困憊でした。

 何はともあれ、年内最終戦を白星で飾ると共に、王座戦の二次予選への切符を手にしました。
 師匠との将棋や逆転勝ち、そして本局と今期の王座戦にはツキも感じます。一つでも上に行けるよう、頑張ります。

 昨日の大一番は、棋王戦挑戦者決定戦では羽生二冠が勝ち挑戦権獲得。その棋王の持ち主、佐藤二冠はA級順位戦で谷川九段に破れ、何と6連敗。さすがに首が寒い状態ですね。逆に谷川九段はこれでかなり安全圏。佐藤二冠はここから下位陣との直接対決が続くので、そこをどう凌ぐかに懸かってきそうです。


 それではまた
posted by 遠山雄亮 at 15:52| Comment(1) | TrackBack(2) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月15日

千葉五段戦

 振り駒で後手になり、千葉五段が居飛車を志向してきたのでゴキゲン中飛車にかまえる。
 最近では珍しい▲78金型に。清水女流二冠が倉敷藤花戦でタイトル奪取に成功した原動力となった戦法ですね。

 イマイチ冴えない日で序盤は苦しみました。相手の機敏な動きに対応するのが精一杯。しかし対応していたら少し良くなったと思ったのが第1図。解説の都合上先後を逆にしてあります。▲が私です。


千葉戦 19.12.14@.gif


 後手から△65桂の狙いが厳しいうえ玉の固さも大差ながら、やはり竜も大きいので少し指せるのではないかと思いました。その判断は当っていたのですが、ここで間違えてしまいました。
 ▲84竜と飛に当てて引いたのが悪手。同じ引くなら▲86竜とすべきでした。これだと△57角成▲66角(▲68銀は△85歩)△78飛成▲同銀△68馬▲75竜△65金で悪いと思ったのですが、


千葉戦 19.12.14A.gif


 ここで▲77竜が盤上この一手の好手。△同馬の一手に▲同角とすれば両取りに空を切らせた格好で先手十分でした。これは感想戦で他の棋士に指摘されたもので、思わず天を仰いでしまいました。こんな手も読めないようじゃいけません。この日は特にダメでした。
 ▲84竜に平凡に△76飛と逃げられてまずいのではいけません。△77飛成▲同桂△57角打▲82竜△79角成▲同金△同角成なら▲74歩で攻め合い勝ちだと思ったのですが、平凡に逃げられるのを軽視しました。

 この後もミスが出て敗勢に。しかし夕食休憩後くらいからやっと頭が回り始め、得意の(?)粘りに出ます。
 片上五段の言う通り、ずっと悪かったのですが、とにかく決め手を与えないよう、辛抱強く辛抱強く指し続けました。師匠に勝って勝ちあがったのに、あっさり負けては顔向け出来ませんから。

 実際随分と悪かったのですが、相手の残り時間も切迫し始め、形勢も切迫し始めて希望が出てきました。それが第3図


千葉戦 19.12.14D.gif


 ここから▲46桂△94飛▲72竜と開き直ったのが勝負手。34の地点には馬が利いていますが、馬がどくと跳ぶぞ、とプレッシャーをかけています。また▲72竜により△76歩で角が詰む形になりましたが、逃げずに勝負しようとの事。後手からは△45歩や△76歩、また△71歩など有力な手は色々あるのですが、一編には指せないのがポイントです。
 今まで辛抱を続けていただけに、この開き直りは意表を突いたようです。感想戦の結論では形勢も随分難しかったようです。

 とはいえまだ少し悪かったと思いますが、時間切迫で相手が間違え、勝ちになったと思ったのが第4図


千葉戦 19.12.14C.gif


 △47歩成と迫られたところで、取ると△49馬でアウト。そこで攻めに目を向けて▲41銀としたのが決め手でした。この手がぴったり詰めろになっている(▲32銀成△同玉▲43金以下)のもポイント。固い玉形ですが、やはり守りの金が急所の駒です。後手は△38と▲同金△31金と抵抗してきましたが、▲43歩から確実に寄せきりました。

 最近はわりと勝ち星が集まっていますが、冷静に内容を見てみると良くない物ばかり。終盤粘り勝ちばかりです。それも持ち味なので悪い事では無いのですが、やはりもう少し序中盤をしっかりさせなければいけません。
 王座戦一次予選の決勝は、年内に対局があります。良い形で2007年を締めくくりたいものです。


 それではまた
posted by 遠山雄亮 at 22:46| Comment(3) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月12日

菊地七段戦(銀河戦)

 遅くなりましたが、銀河戦の解説を。振り駒で後手となり、やや変則的な中飛車へ。
 全棋譜は囲碁将棋チャンネルのHPで。そちらの盤面が反転出来ないようなので、図面も反転せずに解説します。なので後手△が私ですので気をつけてください。
 菊地七段の巧妙な序盤の前に作戦負けに。少しずつ苦しそうでしたが、勝負手を放ったのが第1図。


菊地戦 19.9.21@.gif


 今▲23歩と打って完封を目指してきたところ。ここで△12桂が狙いの勝負手。▲13角成なら△33飛と捌いて勝負。
 なので▲22歩成ときましたが、△24桂▲31と△36桂と珍しい桂の三段ジャンプ!


菊地戦 19.9.21A.gif


 抑え込まれそうだった飛が角と交換になり、勝負になったと思いました。

 この後色々あって混戦に。かなり追い込んで、逆転したかもしれない、という淡い期待を抱いたのが第3図


菊地戦 19.9.21B.gif


 この△59飛が銀取りと△99角を見て厳しい一着。▲69銀打とすれば受かりますが、△48桂成と追撃してかなりの接戦。先手からは▲53とが非常に厳しいのですが、その寸前を捕えての手だけに手応えがありました。

 ここで菊地七段は残りの考慮時間を全て使って▲68金寄と受けてこられました。これが意表の一手。


菊地戦 19.9.21C.gif


 かなり考えにくい手ですが、△99角を▲78玉で緩和し、銀取りも受けています。この手は全く読んでおらず、混乱しました。ここで一歩あれば△97歩〜△79角があるのですが、残念ながら歩切れ。嫌な予感が。
 そして数手後の悪手を呼んでしましました。


菊地戦 19.9.21D.gif


 ▲88銀と受けてこられた場面。直前の△71金がなかなかの手で少し落ち着きを取り戻したものの、ここで最悪の一手を指してしまいます。正解は△36馬。以下▲99銀に△69馬▲同金△89銀と攻め、


菊地戦 19.9.21E.gif


 ここで▲68玉なら△69飛成以下詰み(!)。▲同玉△69飛成▲88玉や▲87玉△69飛成▲68金など先手にも有力な手段があり形勢は微妙ですが、分のある終盤戦だったかもしれません。この手が指せなかったのは直前の動揺があったから。ここで考慮時間が1分でもあれば違ったのでしょうが、やはり時間も勝負のうちです。

 実戦は△88同角成▲同玉△36馬と進めましたのが、これが敗着。そこで▲93角に対し△同香と取る予定だったのですが、以下▲同歩成△72玉に


菊地戦 19.9.21F.gif


 ▲48銀が盤上この一手の好手。桂を入手し、△69馬(飛を逃げるのでは全然ダメです。)▲同金△同飛成の強襲の時に、▲84桂から詰みを見ています。この成桂は、第1図で放った渾身の勝負手△12桂が跳んできたもの。悲しいですが、負ける時はこんなものです。
 実戦はこの順を回避したものの、以下は順当に押し切られました。

 熱戦でしたが、負けてしまっては意味がありません。ただ面白い終盤戦ではあったと思います。
 銀河戦は前期良い所まで行っただけに、今期も、という思いが強かったのですが、無念です。気を取り直してまた来期頑張ります。


 それではまた
posted by 遠山雄亮 at 23:40| Comment(2) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月28日

木下六段戦

 戦型は前回に続いて後手の木下六段が玉頭位取りに。今回は私は三間飛車で対抗する形になりました。
 序盤はやや不満が残る進行でしたが、実際はもちろん大変。決戦になったのが第1図


木下戦 19.11.27@.gif


 後手としては物凄く選択肢が広い局面。何を指されてもしょうがない、と開き直って▲86飛と指しました。
 ここで71分の大長考。早指しの木下六段にしては珍しいですが、それだけ難しいという事。有力手は△36歩・△82飛・△88角の3通り。
 △36歩には銀で取りますが、2通りあってどちらも変化が広く深い。
 △82飛なら▲64歩△同歩▲71角という大決戦になりそう。
 △88角なら▲84飛として、以下桂香の取り合い。

 ざっと書くとこんな感じに。100手では読みの量が足りない程でしょう。私も相手の大長考中にざっと読んでました。こういう場面の事は渡辺竜王の本に出ていましたね。全体をさらっと読むか、一つの手に的を絞って読むか。私は全体をさらっと読んでいました。途中からは少し休憩も。相手の大長考中というのは時間の過ごし方が案外難しいものです。

 そして指されたのは△88角。対して▲84飛とし、そこで△99角成と来たのが第2図。


木下戦 19.11.27A.gif


 ここでアンテナが反応したのが勝因でした。この△99角成は、△77角成→△99馬と行くより△99角成→△77馬と行った方が馬の位置が良い、という意味。その差は形勢にそのまま響くほど。しかしここで先ほどさらっと読んでいて考えていた手がありました。そこで今度はこちらが夕休を含めると1時間以上考え、▲86角。


木下戦 19.11.27D.gif


 飛取りでかつ桂取りを受けた手。後手も△41飛が桂に紐をつけて味が良いのですが、▲82飛成△88馬に▲45歩△同銀左▲42歩△31飛▲52竜が好手段。


木下戦 19.11.27G.gif


 ▲41歩成の単純な狙いが受かりません。以下△87馬▲41歩成△86馬に▲42歩(!)で優勢です。こうなると位取りの裏をとった感じですね。オフサイドラインの裏を取った感じです。

 そこで第3図で△82香とされました。これも候補手の一つ。これに対して▲42角成△84香▲32馬△同金▲78歩が好手段


木下戦 19.11.27H.gif


 駒損ですが馬の動きをシャットアウト。先手陣は小駒が無いと寄せづらいのも見逃せません。以下△87香成▲82飛△77成香に▲42金が厳しい攻め。


木下戦 19.11.27E.gif


 ここで△同金▲同飛成△32金と敢えて王手銀取りをかけさせて、以下▲44竜△43金と竜を詰ますのが成立すると厄介なのですが


木下戦 19.11.27F.gif


 ここで▲45金が用意の好手。後手は持ち駒が悪く、△44金▲同金△23銀くらいですが、そこで▲34歩と打てば攻めきれる格好です。この手を夕休に発見し、イケルと思いました。

 後手は違う受け方をしてきたものの、完全に位取りの裏を取り侵入した形に。以下は素早く寄せきる事が出来ました。

 全体的に戦いが始まってからは読みもしっかりしていて、良い内容でした。体調がかなり戻ったのも勝因の一つだと思います。
 このまま、一つでも多く白星を重ねていけるよう頑張ります。

 この日のC級2組は面白い将棋が多かったように思います。驚愕の角打ちから豊島四段が圧勝した佐藤(天)ー豊島戦。そして思いのこもった局面から驚愕の角打ちが出て、終盤大激戦となった大内ー村山戦。信じられない大逆転の幕切れの西尾ー中村(亮)戦。そして2時まで延々力のこもった攻防が行なわれた所司ー藤原戦。
 是非名人戦棋譜速報で見ていただきたい将棋です。このまま埋もれてしまうには惜しすぎる将棋ばかりでした。

 今日から竜王戦第5局が始まりました。予想通りの相矢倉に。佐藤二冠は時間の使い方から見るに、かなり作戦を練ってきた事が見受けられます。決着は明日の夜になります。渡辺竜王が一気に防衛するのでしょうか。
中継は竜王戦中継公式サイト
衛星放送の放送時間はこちらでチェックを


 それではまた
posted by 遠山雄亮 at 13:29| Comment(7) | TrackBack(1) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月08日

加瀬六段戦

 振り駒で先手に。何となくホッとしました。師匠が先手というのは何となく変かと。考えすぎでしょうか。

 師匠も振り飛車党なのですが、▲76歩△34歩▲75歩にあっさりと△84歩。私の石田流になりました。
 せっかくの将棋。ゆっくりのんびり、と思っていたのですが、いきなりの仕掛けにビックリ。それが第1図


加瀬戦 19.11.7@.gif


 △72飛から△74歩▲同歩△同銀と仕掛けてきました。一見すると抑え込まれそうですが、ここで▲65歩が石田流の常用手段。以下△88角成▲同銀△75歩▲36飛△45角▲56歩と進め、手になりそうな気がしました。
 その「気」は間違っていなかったのですが、攻め間違えて悪くしてしまう。しかし師匠にも一失あり挽回。夕食休憩明け少ししたのが第2図


加瀬戦 19.11.7A.gif


 後手陣に竜がいますが誤植ではありません。この竜が強力でこちらは攻めが無い状態。しかも左側にはいない方が良い駒など遊び駒だらけ。急所に歩も垂れており、嫌気のさしそうな局面ですが、後手からも早い攻めはありません。そこでここで▲77銀。方向違いに見えますが、この銀を働かせなければ勝負にならないとみました。折角の対局、あっさり土俵を割る訳にいきません。

 ここからはとにかく辛抱、また辛抱。何度も暴発しそうになりましたが、とにかく左の銀を働かす事だけを目標に頑張ります。そして第3図


加瀬戦 19.11.7B.gif


 ▲66銀とついにここまで使えてきました。この手は△46歩からの攻めの受けにもなっています。ここで△13角も厳しい追撃。ここでも思わず▲15角といきたくなりましたが、グッと堪えて▲57銀。そこで△44銀が△65桂を見てまた厳しいのですが、そこで▲58金。とにかく辛抱です。銀も完全に使えてここはかなりの勝負形。後手もあまり激しく攻めると反動が厳しいので、なかなか上手くいかないようです。

 この後師匠に疑問手があり、攻守逆転して迎えた第4図。


加瀬戦 19.11.7C.gif


 待望の反撃。厳しい攻めで良くなったと思いましたが、ここで△43竜が好手。見落としていて動揺しました。師匠は既に1分将棋なのですが、強さを感じました。難解な戦いは続きます。
 そして最終盤。詰めろを避けつつ攻防に△25桂としたのが第5図


加瀬戦 19.11.7D.gif


 色々駒が当たっていて眩暈がしそうな局面。▲68金と外せば無難ですが、△64歩とされるとハッキリしません。むしろ△34竜をみせられて嫌な局面になります。
 そこでここで勝負をかけて▲26角。△同角▲同歩と進めば際どく詰めろになっているので勝ち。この詰みを読みきって勝ちが見えました。ただ非常に怖い局面でもあるので、油断はしていませんでしたが、この後何とか逃げ切って勝利。

 師匠に投了してもらった瞬間は何とも言えない気持ちでした。私の文章力では上手く伝えられません。
 この将棋は最初から、そして悪い局面でも、最後難解な終盤でも、とにかく楽しく指していました。師匠と公式戦で盤を挟んで「棋の対話」をした事は一生の記念に残ります。何となく気持ちが浮ついていたせいか、出来は良くなかったと思いますが、弟子としては師匠に勝てただけで満足です。しかも師匠が一分将棋まで考えて全力で向かってこられた中で。
 思いはまだまだありますが、これ位にしておきます。一つ言えるのは、忘れられない将棋になる事は間違いない、という事です。

 もう少し早く終わればやはり対局だった弟弟子と皆で飲みに、と思っていたのですが、感想戦終了時にかなり遅い時間だったので大人しく帰宅。今日も研究会で、明日から沖縄へ。ちょっぴりキツイですが、この日の思いを胸に頑張ります。


 それではまた
posted by 遠山雄亮 at 08:52| Comment(7) | TrackBack(1) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月31日

田丸八段戦

 とにかく序盤が長い将棋でした。なにしろ指し手の半分以上が駒組みの手。その中で上手く立ち回り、非常に良い体勢で戦いに入り、そのまま押し切る事が出来ました。

 双方の息が合って相振り飛車へ。相振りといっても、田丸八段は「左玉」という、相居飛車で言うところの右玉を非常に好みます。
 後手の私は美濃囲いを作って速攻に出ました。それが第1図。図面は解説の便宜上先後逆になっていて、▲が私です。


田丸戦 19.10.30@.gif


 玉頭から▲36歩と動いたところ。これが好判断だったようです。▲85飛の横利きと▲88角の利きがあるのが主張点。後手(田丸八段)としては、玉の位置が中途半端なのと△72金の離れが痛いところでしょう。

 以下△同歩▲同金△51玉▲35歩△43銀と進み、位を奪還して満足な序盤。途中△43銀では△25銀と来られるのが嫌でしたが、突っ張り流らしからぬ後退にやや驚きました。どうやら勢いで押し切ったようです。
 参考までに△25銀には▲同金△同飛となった時に▲48銀の予定。いきなり▲34銀は△24飛▲33銀不成△同桂、で駒得でもなかなか上手くいきません。

 以下第二次駒組みに。位の奪還と玉の移動(△41玉→△51玉→△62玉で手損)で手数をかなり得しており、作戦勝ちだと思いました。

 そして長い駒組みを経て迎えた第2図


田丸戦 19.10.30A.gif


 こちらは銀冠で非常に堅い囲い。どう手を作るか、という所ですが、3筋の拠点が大きく、▲45歩や場合によっては▲25金の進出もあり、手には困りません。実戦はここで▲66歩。これは飛を右に転換する狙いもあります。
 まだ駒がぶつかったばかりですが、かなり優位を感じました。特に実戦的にはかなり勝ちやすい形。「堅い、攻めてる」なので、後は切れないように心掛けるだけです。


 そして第3図が夕食休憩の局面。


田丸戦 19.10.30B.gif


 いわゆる「美味しい夕飯」を済ませて、次の手でついに敵陣に火の手が上がりました。さてその手は??

 以下やや強引ながら勢いと堅陣に任せて一気に押し込み、一手勝ちの局面に。そして次が最後の局面。


田丸戦 19.10.30C.gif


 ▲47金と銀を取って△同金と応じたところ。こちらも随分危なくなりましたが、ここでは詰みを読みきっていました。手数は短いながら少し工夫が必要です。是非考えてみてください。

 序盤から比較的上手く指せて快勝。ただ、寄せがやや危なかったのが反省点。その辺は課題ですね。

 これで早くも前期の勝ち星を上回る事が出来ました。後は幾つ上積み出来るか。一局一局大切に頑張っていきます。


 それではまた
posted by 遠山雄亮 at 18:30| Comment(9) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月19日

佐藤(紳)六段戦

 先手番の私は久しぶりに石田流を採用。▲76歩△34歩▲75歩と進めました。それに対し△84歩▲78飛△85歩と来たので▲74歩といきなりの開戦。升田賞も獲った鈴木八段考案の新石田流です。それが第1図


佐藤(紳)戦 19.9.18@.gif


 この▲74歩に対して後手の佐藤六段が大長考。そしてそのまま昼食休憩。7手しか進んでいない局面での休憩はかなり珍しいと思います。

 この後後手が新構想を出すも実らず結局従来の形に。そこでこちらが「凡手」を指して一気に苦戦に。感想戦でこちらの考えに大穴が開いている事を知らされて愕然としました。アホです。 
 大作戦負けから完封目前。ただ唯一の救いは序盤の長考で相手の残り時間が少ない事。そんな中迎えた第2図


佐藤(紳)戦 19.9.18A.gif


 今後手が△75歩としたところ。相手陣は馬付きの変則美濃囲いでその堅さにクラクラしました。
 しばらく我慢の手が続いていましたが、ここしかないと見て撃ってでました。それが▲85桂の勝負手。この手は前回の順位戦(前局でもある)の小林六段戦でも出た手筋。同じ手筋を連続して指すとはこれまた珍しい。
 以下△同飛▲86歩△82飛▲85歩と伸ばして、これが意外や意外大変な形勢。この手筋、時と場合を選ぶものの、有力な時も多いようです。失敗すると本当にヒドイ目に逢うのですが。

 この後一進一退の攻防が続き、迎えた第3図


佐藤(紳)戦 19.9.18B.gif


 ▲72歩成に△51銀としたところ。押したり引いたりの手が出て、ずっと難しい形勢だと思っていたのですが、急に良くなった気がしました。そこで思い切って▲73と、と指しましたがこれが好手だったよう。
 先手は▲79歩として後手の竜の利きを止めたいのですが、タイミングを誤ると△77歩で逆効果。そのタイミングを掴みにいきました。それは手順を追って。

 以下△47角成▲63と△45香▲52と△同銀▲47銀△同香不成▲38金△48香成▲79歩


佐藤(紳)戦 19.9.18C.gif


 後手の攻めを強引に呼び込んで敢えて攻め合いに。そして引き付けておいて▲79歩。うまく言葉に出来ませんが、これが非常に良いタイミングでした。後手は△38成香▲同玉△77歩としましたがそこで▲26香


佐藤(紳)戦 19.9.18D.gif


 後手から△78歩成とされてもまだ先手玉はなかなか詰みません。なのでその瞬間に寄せきってしまえば良いという発想です。ギリギリまで引き付けて一気に斬るというイメージ。
 具体的には△78歩成ならば▲31金△同馬▲23香成△同玉▲31竜と進めて


佐藤(紳)戦 19.9.18E.gif


 これで先手玉は際どいながら詰まず、後手玉は受け無しなので勝ち。▲79歩が竜の利きを止めて輝いています。
 実戦は後手がこれを避けて受けにまわりましたが、持ち駒を投入してきたので最後は△79竜が詰めろでも何でも無い、という形を作って勝ちきりました。

 本局の良かった点はギアチェンジ。第2図といい第3図といい、そこまでと違う流れの手を指すのは難しいところ。実際最近の課題でしたが、受けから攻めと暖流から激流を上手く切り替えられました。この辺は言葉にするには難しいですが、将棋では非常に大事なところなのです。やはり人間同士だから流れを意識してしまう、という事だと思います。

 課題も多く残った一局でしたが、順位戦で強敵に競り勝てたのは少し自信になりました。長丁場ですが一局一局大切に戦っていきたいと思います。

 そして再び明後日が対局。そんな時に限って昨日の感想戦後〜明日まで魅力的なお誘いをいただきました。しかし疲れを残さない為にも残念ながら全てお断りする事に。無念。それを晴らすには(?)やはり勝ち星が一番です。次も頑張ります。


 それではまた
ラベル:将棋
posted by 遠山雄亮 at 21:59| Comment(6) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月14日

森内名人戦(銀河戦決勝トーナメント)

 さて最後は銀河戦決勝トーナメント1回戦の森内名人戦。銀河戦は予選を抜けた後、ブロックで5連勝して決勝トーナメント進出。勝った相手は強敵ばかりだったので、この対局にも自信を持って向かいました。ただ懸念はこの時4連敗中だった事。強敵と当たる時に自分の調子が上向いていないのは残念でもあり、それこそ普段の行いが悪いともいえます。

 7/27(対局日)
 8/18(放映日)

 振り駒で後手になり、NHK杯に続いてゴキゲン中飛車へ。森内名人にしては珍しく角交換の将棋を選択。遠山流も指せたのですが、NHK杯で負けた事もあって今回は普通に囲う展開に。
 解説の都合上先後逆にしてあります。という事で▲が私。また、全棋譜が囲碁・将棋チャンネルのHPで見る事が出来ますので是非チェックしてから解説を読んでください。

 第1図は後手が△75歩と突き捨ててから△25歩と来た場面。


森内戦 19.7.27@.gif


 ここで前からの読み筋通り▲44銀と突進したのが冴えた一手。普通△26歩から銀冠を崩されて良いという事は無いのですが、この局面では△76歩が見えているのでそうも言ってられません。そこでむしろ守りの銀も加えて一気に突き進もうというのが本譜の進行。
 以下△26歩▲同銀△76歩▲66角△77歩成▲35銀引と進んで第2図


森内戦 19.7.27A.gif


 角と銀2枚による迫力満点の攻め。後手は歩切れのためピッタリした受けがありません。ここから飛取りに構わず更に突進を続けます。
 △33桂打▲34銀△88と▲24歩△49角▲23銀打△31玉▲32銀成△同金▲23歩成△58角成


森内戦 19.7.27B.gif


 猛烈な攻め合いに。後手も受けを放棄してお互いわが道を進んでいます。そして結果的には勝機十二分だったこの第3図。

 現在先手の飛桂損。しかし、と金の存在と後手の歩切れにより少し良いのではないかと思っていました。そしてここで考慮時間を3回使い指したのは▲33と。
 これが悪手で形勢不明に。棋譜を見ていただければ分かりますが、ここからの展開は一気に寄せてしまおうというもの。形勢が接近していると思ったので、ギリギリの寄せを目指すべきだと思いました。
 ところがその形勢判断が誤り。実はこの局面、私の方が優勢どころか勝勢に近かったようです。感想戦でも森内名人に「ここは全然ダメだと思った」と言われ愕然。
 ここでは▲22歩からジリジリ駒を取りながら攻めていけば、というかこの手さえ指せれば確実に勝っていたでしょう。ちらりと浮かんだのですが、玉を逃がす寄せなのでためらいがありました。しかし形勢がだいぶ良いならば切れない攻めを目指しつつ上部を厚くすれば負けの無い形勢でした。
 これがNHK杯の時に学びながら生かせなかったところ。焦っちゃいけないのです。本譜は寄せに行ってるのですが、完全に焦りながら指しています。
 もう一つ。形として最後に▲74桂が逃げ道を塞ぎながら飛取りになる味の良い手になりそう。これは分かっていたのですが、それならなお△88歩と指しそうなもの。そういう思考を持っていながら本譜の順に飛び込んだのは、やはり未熟です。

 混戦となりましたが、厳密にはもう一度チャンスがありました。それが第4図


森内戦 19.7.27C.gif


 後手が△49銀と攻め合ってきたところ。ここで▲43金△同金▲同銀成と下駄を預ければ勝ちがあったかもしれません。以下△38銀成から際どいのですが、感想戦そしてその後の検討でも詰みが発見出来ませんでした。
 本譜の▲48金打は良い手だと思ったのですが、△27歩▲同玉△67馬がそれを上回る好手順


森内戦 19.7.27D.gif


 さすがの順で逆転してしまいました。▲42成銀△同玉に▲55角と逃げるよりありませんでしたが、△25歩▲同銀△45金が上手い順で逆に苦しくなってしまいました。
 この後は粘る順があるも、途中の気持ちを引きずってしまってあっさり土俵を割ってしまいました。

 振り返るとやはり辛い一局。今でも悔いが残ります。この悔しさを晴らすにはもう一度上の方で当たり勝つしかありません。そのためにももっともっと強くなって、もっともっと勝っていきたい、ただその一念です。今期の銀河戦決勝トーナメントでは同い年のエイちゃんこと飯島五段が、前に銀河戦で逆転負けを喫した羽生三冠に借りを返しました。それを見て、自分もかくありたいという気持ちをまた強くしました。必ず今度は勝局を当ブログで紹介したいと思います。

 というわけで真夏の大一番3局は全敗。前の教訓を生かせなかったり力みすぎたり。冷静に今振り返ると情けない気もします。ただ裏返せばまだまだ進化の余地があるという事。格上に臨んだ2局はどちらも勝機十分でしたし、技術的にそこまで劣っていないという自信も持てました。またこうしたチャンスを作れるよう、一局一局大切に、気持ちを込めて戦っていきます。


 それではまた
ラベル:将棋
posted by 遠山雄亮 at 16:48| Comment(3) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月08日

行方戦(NHK杯1回戦)

 さて今日はNHK杯の行方八段戦。
 こちらはTV棋戦の関係で記事が少し飛びます。
 6/24
 6/25(対局日)
 7/8(放映日)

 今こうして読んでみると、改めて皆さんのコメント、応援に励まされます。ご覧になった方は内容はお分かりの事と思いますが、もし放映をご覧になっていない方は是非NHK講座9月号でご確認を。

 放映でも出ていたように、行方八段とは三段時代の8年位前から将棋を教わっており、練習将棋だけでも200局以上指しています。三段時代苦しんでいた時にもずっと教えていただき、はっぱをかけられていたのは四段昇段の一つの要因でした。三段で高齢(といっても20代前半)だと普通そういう人(当時の行方八段は低段ながら既にトップに近いところにいた)に声をかけられる事は普通考えにくいところ。でも行方八段にはずっと変わらず将棋を教えていただき、それがある種の励みにもなっていました。そしてもちろん勉強にもなりました。
 プライベートでも仲は良く、飲みに行った事は数知れず。LIVEも5,6回は一緒に行ってるような気がします。

 そんな仲ですから当然手の内は知り尽くされています。振り駒で私が後手となったのでゴキゲン中飛車は予想されていたところでしょう。本局は遠山流でしたが、その中にも新手を混ぜて相手の狙いを外しにかかりました。その手の成否は微妙ながら意表を突いた事は確か。この日の為にとっておいた手ですからそれくらいの効果が無いとつまりません。

 居飛車が仕掛けて迎えた第1図。次の手が我ながら良い手でした。解説の都合上、先後逆になっていますので▲が私です。


行方戦 19.6.25@.gif


 △65桂と跳ねてきたところ。思わず▲84歩と指したくなるところですがこれは△81飛と引かれて意外と後続が難しい。△73飛なら▲74歩△同銀▲83歩成で話が上手いのですが…
 ここで▲74歩と垂らしたのが会心の一手。63銀型なだけに▲73歩成が強烈。後手はやむを得ず△72歩と受けましたが、そこでおもむろに▲84歩△81飛をきめて▲66歩と突いて桂得確定。△72歩と打っているので△77歩が打てない仕組み。
 これで桂得となり有利となるも、すぐに間違えました。


行方戦 19.6.25A.gif


 今△44歩と突いたところ。桂損をしているのにじっとされて手が見えなくなりました。ここで▲65桂と跳ねたのが焦りからきた悪手。早く勝ちたいという気持ちが出てしまっています。すかさず△85歩と打たれて飛び上がりました。角を逃げると銀が只。うっかりして青ざめました。この辺り、悪いながら崩れてもらえないのがA級の強さですね。
 △85歩がが生じたのが▲65桂の罪。ここは▲56飛と落ち着いて指し、以下△43金右▲76飛としてから▲65桂を狙えば優勢でした。焦っちゃいけません。
 しかし本譜▲65桂△85歩▲53歩に△同金は救われました。△86歩▲52歩成△75角と踏み込まれたら逆に不利でした。本譜はバランスの取れた進行に。


行方戦 19.6.25B.gif


 後手がじっと△66歩と角道を止めたところ。実戦はここで▲53歩と指したもののあまり良い手ではありませんでした。恐らく最善手は終局後解説の鈴木八段に教わった▲64銀。これには△86角と覗いてきますが▲57飛とかわしておきます。
 この順は手順に飛取りになるのでとても指しにくい、どころか考えもしなかった順。しかし後で色々考えた結果、どうもこれが一番良かったようです。思いもつかないところに実力の無さを感じます。

 しかしこの将棋はどちらかが間違えるとどちらかがお付き合いをするという流れ(早指しにはありがち)で、再びこちらに流れが来たのが第4図


行方戦 19.6.25C.gif


 今後手が△87歩成としました。この局面が最も悔やまれるところ。ここで▲55桂という手を随分前から狙っていました(NHK講座の観戦記ではちょっと局面が違っています汗)。これは△同歩▲同飛と進めての十字飛車が狙い。こうなると飛が働いて後手玉の寄りが見えてきます。かといって△88と、では▲43桂成△同金▲53と、と進めてこれは本譜より遥かに良く、形勢も少し有利でした。
 分かっていたのに打たなかったのは▲55桂に△42金引という手が咄嗟に見えたから。しかし結果的にはこの方が良く、ここでのミスは痛かった。そしてそれ以上に…


行方戦 19.6.25D.gif


 第4図から▲53と△88と▲43と△同金と進んだ図。ここで▲53金が敗着。当然▲52銀とするべきで、△42金▲54飛の局面がスピードが遅くてあまり気乗りがしなかったのですが、それでもそう進めば勝負形。本譜は全然ダメにして、最後△92角の好手を食らってしまいました。ここでも悪手を指した原因は焦り。緊張はあまりしていなかったのですが、やはり少し精神的に余裕が無かったようです。
 そしてここでのミスは第4図で△55桂を逃した事も要因の一つ。自分の好きな手を指さなかった事で勝手に動揺してしまいました。将棋は人間同士の戦いなので、最善手を重ねる事も大切ながら自分のポリシーも大切。そうした個性的な一手が勝利につながる事も多いはず。そういう手を指せなかった事で集中が少し切れて本譜の展開になってしまいました。

 というわけで残念な逆転負け。逆転とはいっても優勢だったのは第2図だけで後はずっと難しい局面が続いていました。強豪相手にまずまず戦えたとは思いますが、第4図で▲55桂を逃したのは屈辱的。緊張していなかったとはいえ、やはりどこか余裕の無い指し回しでした。
 今回良い経験が(苦い経験とも言う)出来たので、来年こそは1回戦突破を目指します。おっとその前に厳しい予選を抜けなければ(笑)

 本局は、負け惜しみを言えば今までお世話になったお礼ともいえますかね。私としては、行方八段が本気を出さざるを得ない状況で戦うのが目標の一つ。どんな棋戦でも良いので、もっと上の方で、負けた方が倒れこむ位の勝負をしたいものです。

 案外良く言われるのが「惜しい逆転負けだった」という事ですが、実はそうでも無かったのですね。次紹介する将棋に比べればこの将棋は可愛いものでした…この将棋を「次」に生かせないのが本当の甘さなのですが、それはまた来週の火曜日くらいに。


 それではまた
ラベル:将棋
posted by 遠山雄亮 at 19:24| Comment(5) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月29日

小林(宏)六段戦

 昨日は後手番。居飛車党の小林六段なのでお決まりのゴキゲン中飛車に。最近自分でもゴキゲンが多い気がしますが、色々と未開拓の部分が多いため、指していて面白いんですね。
 この日もありそうで前例の無い局面が続き、悶々とした時間が流れる。
 仕掛けがうまくいき、どうも少し良さそうな局面で迎えた第1図。解説上先後逆になっていますので、▲が私です。


小林(宏)戦 19.8.28@.gif


 今▲73飛成に△61飛と逃げたところ。駒損無く飛を成りこんで良さを実感。後手の主張は玉頭の厚みで、△63角の応援もある事から先手は上手い攻めが必要。
 ここで▲36歩が決断の一手。玉頭の厚みが後手の主張なので、それを解消してしまえば自然と優位が転がり込んでくるはず。

 実戦は△72歩としてきたので、▲63竜△同飛▲35歩△23銀▲34桂と玉頭に殺到。ただし飛を渡しているので正確な指し手が求められています。

 以下△同銀右▲同歩△同銀▲35歩△43銀▲34銀△25歩と進んで第2図


小林(宏)戦 19.8.28A.gif


 最後の△25歩は勝負手で、受けていてもキリが無いとみて、攻め合いに活路を求めてきました。ここで残り2時間から54分をさいての大長考。終盤では異例の長さですが、なかなか上手い手が見えませんでした。
 例えば▲33銀成△同金右▲34歩△同銀▲52角は両取りで味が良いように見えますが、そこで△54歩が強烈。


小林(宏)戦 19.8.28B.gif


 ▲33角成にも△同飛と取られてしまうのでこれは逆転。とにかく「△54歩」を良いタイミングで突かせて飛に働かれるのは避けたい。

 ▲33銀成△同金右▲34桂△23玉に、▲25歩もあるところで、次に▲33角成とすればかなり厳しいのだが、△44歩と角道を止められて嫌。そこでいきなり▲33角成△同玉(△同金は▲41角の王手飛車)▲51角も考えられるところ。最初はこれを中心に考えていました。


小林(宏)戦 19.8.28C.gif


 △42歩は必然で寄るかどうか。以下▲同桂成△同金▲34歩△同銀▲44金と手筋を駆使して攻める。しかし△32玉▲34金△54歩。再び出てきた「△54歩」


小林(宏)戦 19.8.28D.gif


 これでは勝ちとはいえない。むしろ危ないところ。とにかく眠っている△63飛に働かれたくありません。
 熟考してついに考え付いたのが、▲33銀成△同金右▲34桂△23玉(ここ以外は簡単に寄り筋)に▲37桂という手。


小林(宏)戦 19.8.28E.gif


 この手の発見にかなり手間取りました。これは△44歩なら▲25桂を見せているので後手にも厳しい手を要求した手といえる。△54歩にはそこで▲33角成が好手順になります。
 そこで後手は最強の△26歩。それに対し▲33角成△同玉▲51角△42歩▲25桂△24玉▲42桂成と進め


小林(宏)戦 19.8.28F.gif


 これで後手玉は受け無し。先手玉は危ない形ながら△27歩成には▲同金で詰みは無い形。▲68の金もちゃんと効いています。
 実戦は▲27同金で後手が投了。珍しく読み切って勝った一局で、切り合いの得意な小林六段に切り合いの勝負で勝てたのは自信になりました。

 次の対局も恐らく順位戦なので、集中して次戦の難敵に臨みたいと思います。


 それではまた
 
ラベル:将棋
posted by 遠山雄亮 at 14:48| Comment(6) | TrackBack(1) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月07日

木下六段戦

 振り駒で先手となり、四間飛車に。端の位をこちらが取り、後手は3・4筋に位を張る形。いわゆる玉頭位取り。局数は少ないものの居飛車側としても有力な作戦です。

 途中で私がやり損ない、後手が鋭く踏み込みをみせる。やや悪いかと思っていましたが相手の攻めも強引でギリギリの勝負となった第1図。ここが急所の局面。


木下戦 19.8.6@.gif


 △49飛と打ったところ。この両取りは受けづらく、▲48銀では△58とがピッタリ。ただしこの一瞬は斜め駒が無いと詰まないのでチャンスともいえます。
 普通は▲24桂と攻めるのですが、△39飛成とされて詰むかどうか。これが詰まないとみて実戦では▲24桂ではなく一路ずらして▲14桂と勝負手を放ちました。
 以下△同歩▲同歩に△39飛成と後手は下駄を預けてきたのが第2図。


木下戦 19.8.6A.gif


 ここから▲13銀△同香▲同歩成△同桂▲同香成△同玉に▲14香が好手。


木下戦 19.8.6B.gif


 ここで▲14歩では△22玉▲13金△21玉で詰みません。木下六段はこの▲14香をうっかりしたとの事。確かにあまり見た事の無い筋です。
 実戦は第3図で投了。以下は△同玉に▲16飛△15歩▲同銀△同角(△23玉は▲14銀から押していけば詰み)▲同飛△同玉▲26角以下と詰みとなります。

 終局後感想戦で第1図を検討していると対局中の羽生三冠がひょっこり登場(順位戦2連勝スタートとなりましたね)。そして▲24桂ではまずいか、と問われる。一応読み筋だったので「詰まないと思ったのですが…」と応えるとしばし黙考の後「うん?ああそうですね、詰まないか」とおしゃって去られる。
 これが普通の棋士に言われたならば余り気にしないのですが、発言者が発言者ですから一応調べてみる事に。すると、確かに危ない。

 第1図から▲24桂△39飛成▲32桂成△同玉▲42金△同角▲同と△同玉▲72飛△52桂、とここまでは一本道。そこで▲32金△43玉となって詰まないと思ったのですが…


木下戦 19.8.6C.gif


 ここで▲87角が後手の合駒の悪さをついた好手。これに気付いていませんでした。…しかし以下△54金▲同角△同玉▲74飛成に△64角が絶妙の合駒。


木下戦 19.8.6D.gif


 この角が42の地点に利いて際どいながら詰まない様子。第1図から手数も長いですし、かなり難しい手順ですがそこまで一瞬で見切っていたと考えるとさすがだと思いました。

 という事で第1図で▲24桂では際どく負け。すると▲14桂は良い勝負手だったよう。実戦の△同歩が敗着で△12玉とされるとこちらが良くて千日手だったと思います。将棋は最後の最後が本当に難しいですね。

 王座戦は初参加の去年は2回戦であっさり負けてしまったので、今年はもっと上を目指して頑張ります。もしかしたら次は師匠と、という可能性も秘めています。

 ちなみに銀河戦の決勝トーナメント1回戦の放映日が決まったようで、8/18(土)になりました。相手はさきほど永世名人の称号を得た森内名人。皆さん、必見です。


 それではまた
posted by 遠山雄亮 at 17:58| Comment(5) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月19日

村田五段戦

 先手番で私が初手に▲56歩と先手中飛車を明示。すると村田五段は時折見せる相振り飛車に。想定していた事とはいえ、居飛車党の村田五段としては若干指しにくいかと思っていた。

 重苦しい、いかにも順位戦という戦いが続く。そして迎えた第1図

.

 夕食休憩の局面。最初はやや失敗気味という気もしたが、ここは難しい局面になったと感じていた。しかし次の指し手が分からない。
 ▲46歩といってみたかった。△同歩▲同銀として、△26歩ならば▲35銀で勝負。怖いが後手も攻めが続かないとまずいので難解。しかし▲46歩に△34銀と辛抱されると良く分からない。
 また、▲46歩に△26歩▲同歩△46歩という手もある。これだと▲同銀といくと△26飛なので、▲55歩として次に▲46銀を見せる。

 しかしどれも不明瞭。しかも自信が無い。

 そこで▲68金も考えた。△42金なら▲58金左。これは千日手コース。△34銀と出てくれば▲84歩と一歩交換。さらには▲84飛〜▲44飛という筋も考えられる。
 ただあまりにも消極的。残り時間でかなり差が開いていたうえに先手番だったので千日手にはしにくい。

 結局1時間近く考えて▲55歩を選択。これは次こそ▲46歩といきますよ、という手で、後手の動きを催促している意味がある。

 そして進んで第2図

村田戦 19.7.17A.gif

 ここで▲45歩△55角▲同角と進むのが前からの読み筋。そこで△44歩と弱気な態度なら

村田戦 19.7.17B.gif

 ▲46銀が好手。△54銀には▲44角があるので後手は先手の角が追いにくい。
 ただ、△45桂と強く反撃してくる手があるので難解ではある。
 第2図を眺めているうちに、ふと先に▲53歩と叩くのが良い手に見えた。しかしこれが指しすぎの悪手。
 △同金右▲45歩△55角▲同角△44歩と辛抱したのが良い手。

村田戦 19.7.17C.gif

 これで先手の攻めが途切れてしまった。先ほどと同じように▲46銀では△54銀とされると▲44角といけない。これが▲53歩の罪。
 どうやらわずかな指しすぎを見事に咎められてしまった感じだ。

 ▲53歩を指した背景には、夕食休憩を挟んで長考した事が挙げられる。▲53歩の局面は既に残り1時間を切っていて、その辺での焦りも若干あった。
 その点後手は△44歩のあたりでまだ2時間近く残っており、冷静さを保つ余裕があったといえる。だから時間も勝負のうちなのである。

 以下は難しいながら少しずつ足りない展開で敗戦。順位戦は先も長いので、これからも一局一局大切にいきたいと思います。


 それではまた
ラベル:将棋
posted by 遠山雄亮 at 17:22| Comment(7) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月14日

櫛田六段戦

 世紀末四間飛車の櫛田六段との対戦。せっかくなので四間飛車の将棋にしたいと考えていて、先手となった私が四間に振ってみました。
 後手の櫛田六段は急戦策。

.

 まさに定跡形。一体何年前からあるか分からない、この△53銀左急戦。
 ただしさすがスペシャリスト。飛側の端歩の交換が入っているのが工夫。それを活かして第1図で△55歩とこられました。
 これはもし▲75歩だと△56歩▲74歩と進み

櫛田戦 19.7.13@.gif

 端歩が無いと▲95角が7筋を破る狙いで厳しいのですが、端歩の交換によりその手が消されています。
 もちろん私もそれは分かっていて、第1図の△55歩に▲57金と対抗。定跡形ながらほとんど実戦例の無い形に飛び込みます。

櫛田戦 19.7.13B.gif

 派手に捌きあって△86飛と後手が走ったところ。この局面類似局もただ1局。その1局は▲加瀬ー△櫛田戦。私の師匠とこの櫛田六段の将棋のみ。つまり私は師匠の足跡を追いかけて指しています。
 その将棋はここで▲加瀬師匠が▲53歩と叩いてさらに局面が激化。結果は△櫛田六段の勝ち。
 私はここで▲58銀と自陣を引き締め、師匠の道筋から離れて未知の世界へ突入しました。

櫛田戦 19.7.13C.gif

 この後しばらく進んで第4図。感想戦の結果ここまでにお互いに一回ずつ疑問手を指していたようですが、後から疑問手を指した私の方が罪が重く、この局面はかなりまずい事に。
 そしてここから△15歩が先手の急所を的確に捉えた好手。美濃囲いを崩すには真っ先にここに手が行かなくてはいけません。
 これがクリーンヒットで、以下は勝ち味の無い将棋。やはり美濃囲いは端に手がつくともろいです。振り飛車側とすればそういう流れにさせた事がまずかった。

 敗れはしましたが、四間飛車のスペシャリストの感覚には感想戦でも感心する事ばかりで得る物もありました。
 とはいえこれで3連敗。来週火曜日の順位戦まで日が無いので、ここは気持ちを切り替えて大阪で頑張ってきます。


 それではまた
ラベル:将棋
posted by 遠山雄亮 at 16:22| Comment(6) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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