まずは5月30日に対局した、戸辺四段との竜王戦6組決勝戦を解説。この将棋は観戦記がついて読売新聞に掲載された関係で、当ブログでは全く解説していませんでした。
5/29
5/30
5/31
当時の記事とコメントを読み返すと、その時の事が鮮明に蘇る気がします。
さて振り駒で後手に。お互い振り飛車党なので対局開始と同時に駆け引きが始まる。そして第1図。解説上の都合で先後逆になっています。▲が私です。

いきなり変則的な立ち上がり。6手目にして前例の無い将棋になりました。この▲66角は温めていた構想で、プロでも似たような前例はただ1局。狙いが分かりにくいのですが、相振り飛車になった時に「▲77角▲88飛」の形から改めて▲66角といく事が多いので、それならばいきなり▲66角として一手得を狙おうというもの。練習将棋では結構指していて手応えも感じていました。
ただしこれは相手が純粋振り飛車党ではないと上手く行かない事も。とはいえ今回の戸辺四段は居飛車を指した事が無いので大丈夫だと思っていました。ところが…

進んで第2図。後手の戸辺四段は見事に居飛車に。こちらとしては目論見が外れました。そもそもこの展開だと最初の端の突き合いの関係で居飛車側は玉側、振り飛車側は飛側を突き越しています。これでは良い理屈がありません。どうもここまでに私の方に細かいミスがあったようで、ここでは取り返しがつかないくらいの作戦負け。
それにしても感想戦で戸辺四段に「展開次第では居飛車にしようと思っていた」と言われてビックリ。手の内を知り尽くしている同士の場合、お互い色々作戦をたてているのですが、この発想は私には無くその時点で既に一本取られていたようです。
ここから自爆覚悟で▲84歩△同歩▲同飛△同飛▲同角と玉砕に。黙っているとますます模様が悪くなりそうなので、無理を承知でうって出ました。戸辺四段が攻められる展開を嫌うのももちろん織り込み済み。
しかしそこから△73桂▲61飛△75歩▲63飛成△42角▲73角成△同銀▲同竜△76歩▲同竜△79角と進められ(長くてすいません)

2枚換えの駒得ながら、後手陣を破るプランが全く見えない形で、形勢不利。こちらの囲いが平べったいので玉頭から手を作る事は不可能。かといって横からもどうやって攻めるか見当がつきません。
しかもここで▲69金としたのがまた最悪。どうせ悪いなら▲69銀と少しでも玉の方に銀を近づけるべき。また▲69金だと後で「△57桂」の筋が残るのもまずい。
こういうところで開き直れないところに「固さ」が表れています。

進んで4図は夕食休憩の局面。今▲66歩と桂に紐をつけたところ。馬2枚が強力なので後手が優勢。ただここで向こうの指し手によってはまだまだ難しいと思っていました。
しかしここでじっくり腰を落とされて△56歩が決め手ともいえる好手。これで観念しました。平凡に▲58歩では金銀が分断されてしまいますし、かといって攻めも無し。△76桂と王手しても▲87玉で却って逆効果。
以下はきっちり押し切られてしまいました。
今改めてこの将棋を見てみると、やはり随所に固さが表れていて、普段の力を発揮出来ずに終わっています。初めての大勝負だったのである程度はやむを得ないところもありますが、対する弟弟子は伸び伸び指している印象。そこに決定的な差が生じ、今回の敗戦につながってしまいました。
私の場合経験上、ある程度こういう舞台に立てば段々慣れてきて必ず結果を出せるはずなので、逆に言えばこういう舞台に数多く上がる事が大切なのかもしれません。そのためにはとにかく一つでも多く勝つ事が重要。この敗戦をこれから先に活かせるようにしたいです。
今読み返してみると負けた次の日の記事で同じような事を書いていますね。また改めて今日それを思い返し、一から頑張ります。
それではまた
ラベル:将棋
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この戸辺戦も残念でしたが何と言っても銀河戦の森内戦で75銀引の時は ヤッツタ!と叫んで
見ていましたが残念でした。ただあそこまで名人を追い詰めたのはすごいと感心しました。
指し手のことは私の棋力ではわかりませんが・・・1つ感動したのが 某プロが 自分が信念を持って指した手が最善手・・といっていたことで 皆それぞれの考えや美学をもっているので
しょうが、思いの強い人がやはり最後には勝っているように感じています。
次の記事も楽しみにしています。
石川 歩