初戦は石川六段。前期のNHK杯ではベスト16に入っており、いきなりの強敵です。
振り駒で後手となる。振り飛車を得意とする石川六段ですが、本局では居飛車を選択されたため、私が振ってゴキゲン中飛車に。
先手が角交換から▲96歩と突く形。先頃流行の戦型です。
お互いに角を打ち合う展開から、角と桂香の交換に(私が角)。そして迎えた第1図。見やすいよう、全て先後逆で私が手前になっています。符号も▲が私です。

今△92飛とまわったところ。ここで▲84飛といきたいのですが、△98飛成で金取りの処置が難しい。という訳で▲96歩といったん辛抱。振り飛車の左の桂香と角の交換なので悪くない取引なのですが、ハッキリ良くするとなると大変です。
さて▲96歩の局面で先手の手番だとして、▲84飛といくと△82香で飛を詰まされます。それを見越して後手は△98と、とジッと手渡し。
しかしそこで▲58金△97と▲48金左が会心の手順。

第1図と比べていただければ一目瞭然。先手玉が一気に固くなりました。また、△96と、とくると▲84飛△82香に▲93歩が手筋で先手優勢。
△98と・△97とは効果が薄かったのに対して、▲58金・▲48金左は明らかなプラスの手だったので、この交換でだいぶ得しました。この得を活かし、この後十数手で投了に追い込みました。
難敵に快勝し自信も生まれ、この後につながった気がします。
さてお昼を済ませ、午後の2回戦は熊坂四段戦。いつも研究会等でお世話になっている先輩です。
振り駒で後手となり、再びゴキゲン中飛車に。こちらが5筋の位を取り、先手は穴熊へ。こちらは穴熊が完成する前に動く作戦に。
少し指し過ぎの順だったようですが、勢いでカバー。そして有利を感じたのが第3図。前局同様先後逆で、▲が私です。

今△86歩と歩切れを解消しつつ歩成をみせてきたところ。先手だけ一方的に飛を手持ちにして馬も作り歩も沢山。しかし後手も桂得が主張ポイント。何もなければ△87歩成〜△78と、といきますよと催促しています。
ここで▲82馬と飛を取ったのが我ながら冴えた一手。働きの良い馬と遊び気味の飛なので、指しにくい手なのですがこの際の好手。
以下△同金に▲85飛が厳しい一着。金取りが受けづらい形です。△64角が普通ですが、▲65飛打くらいで駒得確実。また、△83桂なら▲84歩とゆっくり指して優勢。
実戦は△83角と受けましたが、▲43飛△52銀▲83飛寄成△同金▲同飛成と進んで大成功。△55角と反撃してきましたが

ここで▲56歩が好手。△36桂が怖いですが、▲39玉として飛だけでは後続が無く、逆に▲36歩と桂が取れそうです。というわけで△99角成と逃げましたが、▲81竜と自然に駒得を重ね(約金得)先手優勢。以下手数はかかるも逃げ切ることが出来ました。
さて後1勝でNHK杯出場。心揺れると共にここまで2局戦って疲労もありましたが、最後はとにかく集中して臨む事だけを考えていました。こういう時、私は甘い物を多く摂る事を心掛けています。
決勝の相手は青野九段。振り駒でまた後手になり、3局連続後手番に。相手が居飛車で来たので、ゲンを担いで三度ゴキゲン中飛車に。
私の方が5筋に位を取り、青野九段が急戦でそれをとがめる将棋に。様々な折衝があり迎えた第5図。例によって▲が私です。

後手が△62歩と受けたところ。ここに歩を打つならばやや良さそうです。後手は香得していますが、そのために打った角が遊び気味。逆に先手はそれを咎めるように指したい。
そんな中、この局面で30秒将棋に。▲72角△55銀(両取りを回避する好手)▲同金(飛を取ると△56銀でまずい)△85飛▲45角成とし、最後の▲45角成が金に紐をつけつつ78の銀にも紐をつけた一石二鳥の手となりやや良し。
・・・の予定だったのにフラフラと▲36角。△53金なら▲65金で、という狙いでこれもありそうですが、△53香が上手い反撃。▲65金△同銀▲81角成に△55香と手順に桂を取って後手が優勢に。苦しくなりました。
「秒読みになった瞬間」は危ない所で、一瞬時間に気を取られて間違いやすいところ。皆さんも気を付けてください。私みたいに悪手を指さないように・・・
さて間違えたものの嘆いている暇も無いので、今度は逆に粘りに出ます。あれこれやって、もうこれで負けたらしょうがない、と反撃に出たのが第6図

△59香成と飛を取られた局面。駒割りはほぼ金損。だからといって▲91飛成と香を取っているようでは大勢に遅れます。△88飛が好手で、▲49香なら△89馬と使うのが好手で後手優勢です。
先手としては「1.手番 2.後手の歩切れ 3.後手の馬が遊んでいる」というのが主張。それを考え、▲15歩と勝負手を放ちました。これが主張点を生かした一手。歩切れなので△同歩としました(一歩あれば▲14歩に△51歩と受ければ受かる)が、▲12歩〜▲14歩と香を吊り上げ▲26桂と攻め込みます。とにかく△88飛が間に合わないようにして、後手の馬が遊んだまま攻めきりたいところ。
その後数手進んだ第7図

一方的に攻め、先ほどと比べ後手陣だけ歪んでいます。今も▲57香に△54銀打とさせたところ。ここで▲91飛成と取るのが先ほどと違って好タイミング。△88飛に▲54香△同銀に▲53香が狙いの一手。この為に香を取ったのです。これで底歩を崩してしまえば14の桂と挟撃となり、いかようにも寄せられます。
以下は数手で投了に追い込みました。
こうして3連勝でNHK杯本戦出場決定!もちろん初出場です。NHK杯は小さい頃から観ていて、ずっとずっと出たかった憧れの棋戦。
あの対局者の所に自分が出るのを考えるとワクワクします。しかし表が出来て、いきなりの強敵&難ブロックを見て、今はそちらに頭がいっぱい。多少なりと緊張してしまうかもしれませんが、自分らしい将棋を指したいと思います。
今のところ収録の予定が無いので、放送は7月頃にずれ込みそうです。是非お楽しみに!
それではまた
ラベル:将棋
強豪を倒して、お見事です!
是非、本戦でもご活躍を祈念しております。
放送を楽しみにしております。
また、丁寧な自戦解説ありがとうございました。
一日で予選を終了するとは知りませんでした。3局も
真剣勝負とは大変お疲れのことでしょう。
そんな中、ゴキゲン連採で3連勝とは遠山先生らしさが出て大変痛快です。
本戦でも勝ち上がられますよう祈念しております。
凄い勢いですね。流行っているわけですね(笑)
明るい大局観が光っています。
本戦テレビ放送楽しみにしています。
予選とはいえ1日3局とは驚きです。
本戦はA級との対局ばかりですが、「俺が遠山だ!」というのを全国に知らしめてください。
放送が楽しみですね。
ビジュアルな盤外作戦が見られればさらに楽しみが増えます。羽織袴の正装の練習をする、モヒカン刈りで脅かす、メガネをやめてカラーコンタクトを使う、、、
一二三九段的何か?? ☆☆☆
本戦でも、後手番なら「ゴキゲン」だと思いますが、
先手番だと「どう指すのか?」を楽しみにしてます。
(先手番の「ゴキゲン」は指しにくいと、
何かの本で読んだ記憶があるので」…)
初出場・初優勝を目指して下さい。
NHKの対局は必ずチェックさせていただきます!!
NHK杯で遠山四段が見られるなんて幸せ!ステキ!
是非、遠山スマイルを届けてくださいね!
長野から応援しています☆