2013年03月19日

第2回電王戦4 〜本番の対局について〜

以前の記事
第2回電王戦1 〜全対局と観戦方法について〜
第2回電王戦2 〜プロ棋士とコンピューター将棋の接点〜
第2回電王戦3 〜コンピューター将棋が私より優れる点、劣る点〜


今回は電王戦本番の対局について書いていきます。

大きなポイントは双方がどこまでポテンシャルを出せるかということです。
特に人間が一局の将棋を通じて100%のポテンシャルを出すのは大変です。
コンピューター将棋はよほどのことがなければ100%に近い状態を保って一局を終えることが出来ます。

そこでプロ側は事前の準備でポテンシャルを上げることを狙うでしょう。
これは実際の公式戦でも行う、いわば対局への当然の準備というところです。
事前の研究がうまくいき、自分の得意な形でかつ相手の苦手な形に持ち込めば、戦いを有利に進められます。

塚田九段・三浦八段のタイトル経験、他の3名の若さの勢い、それが100%を超えるポテンシャルを引き出すかもしれません。
そういう未知の可能性は人間側にあると思います。

ちなみに先日、GPS将棋に勝ったら100万円という企画があり、(プロ棋士、奨励会員、女流棋士は参加不可)人間側は多くのアマ強豪が集まりましたが3勝(105敗)しか出来ませんでした。
大差ですが、出せるポテンシャルは人間側がかなり低い状況だったので、ある程度やむを得えない結果でもあります。
ニコニコ生放送の中継を見ていた限りでは、思っていた以上に人間側が中終盤で有利になるケースが多かったです。
しかし100万円のプレッシャーは想像以上のようで、実力からすると信じられない逆転負けを喫する場面を多く観ました。
これが10万円だったら10勝くらいしたと思います。10万円と100万円の違いは普通の方なら分かるでしょう。そういえば勝った一人は生粋の勝負師でした(笑)


コンピューター将棋側も100%を少しでも上回れるよう、必死にチューニングをしているでしょう。
ハード面はすでに5台とも決まっているようなので、あとはソフトの微調整でしょうか。
序盤戦が苦手なことは周知の事実なので、いかに不利にならないで中盤に持ち込めるか、作戦を練っている陣営もあると思います。


勝敗は全く予想がつきません。期待して読んでいた方には申し訳ないのですが。

決着の仕方は一つ予想があります。
互いの棋風が噛み合わないので、終盤まで互角でいかずにわりと早い段階で差がつきそう、ということです。
コンピューター将棋が負ける時は、形作りの概念が無いので解説者が言葉に詰まるような内容になりそうです。開発者の設定次第でもありますが。
プロが負けるパターンとしては、中盤で意表を突かれてミスを出し、そのままミスを重ねて挽回不能になるというのが予想されます。
持ち時間が長いこともあるので、中盤で有利になったほうがそのまま押し切りそうです。大きな逆転はないと思います。

入玉はコンピューター将棋の有名な弱点ですが、それを最初から狙って指す棋士がいるかは分かりませんし、簡単なことではありません。
入玉模様が人間側に有利に働くことを活かし、そうなりやすい作戦を採る、ということは考えられます。
普通にやると相入玉の点数勝負は1000局に1局程度しか出ないので、今回たまたまそれが出る確率は低いとみています。


この対戦で1回でもプロ側が負ければ、それは大きなニュースとなるでしょう。
現役のプロ棋士がコンピューター将棋に負けたことは公式では一度もないからです。

願わくばあまりネガティブな方向には行かないで欲しいです。
コンピューター将棋が勝つことで将棋というものの価値が落ちることはありませんが、必要以上に騒がれて将棋界への興味が削がれるのは危惧するところです。
これまでの将棋連盟の取り組みを振り返ると、そういうことにはならないと思ってはいます。長い間新聞社はじめ多くの方々にプロの勝負を盛り上げていただいていますし、私自身もネットモバイル中継を充実させてきた一員として自信はあります。
ただ世間の風は移ろいやすいもの。心配はあります。
勿論プロ側が圧倒すれば杞憂に終わることです。


どうなるかは分かりませんが、熱い戦いとなって今まで興味の薄かった一般の方にまで将棋を訴求出来れば何よりです。
そういうキッカケになる可能性は高いとも思います。


それではまた
posted by 遠山雄亮 at 20:48| Comment(1) | TrackBack(0) | 電王戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いちファンとして、ここ数年のコンピュータ将棋をみている限りの感想ですが
スポンサーはついて頂いていますが
いってしまえばプロ側にとってはあまりメリットがない勝負であることに対して
開発者側のリスペクトや配慮が(あくまでファン側の立場から表面的にみた限りは)少ないと常々思っています
連盟の取り組みや説明も知っていますし、多くの開発者の方との良好な関係を築けているのもわかりますが
将棋ファンではない一般の方のチェス界に対する認識を見ても、ある程度のネガティブな方向は仕方無いのではないかと思っています
とはいえ、将棋界になにか大きな実害が出るとも思ってないのですけど、もう少し開発者の方との関係性は良い見せ方があるのではないかとも思っています
Posted by r at 2013年03月20日 11:04

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