2006年12月26日

対広瀬四段戦(銀河戦)

 遅くなってしまいましたが、12/9に放映された、銀河戦の広瀬四段戦を解説します。

広瀬戦 18.11.14@.gif

 先手の私がゴキゲン中飛車。後手の広瀬四段は居飛穴へ。
 そして迎えた第1図。△72飛と歩交換を狙ってきたところ。

 ここで▲66角と受けると△82飛で千日手を狙われてしまいます。また▲66銀だと△24角とされても受けづらいですし、そもそも形が悪すぎる。

 そこで▲68飛と動く。当然△75歩▲同歩△同飛と動いてきますが、▲66角△74飛▲78飛として一気に大決戦。
 後手は穴熊といえども金が離れている形なのであまり固くない。良い勝負だと思っていました。

 そこから△同飛成▲同金△45歩▲同歩△73桂▲75飛と進む。

広瀬戦 18.11.14A.gif

 ▲75飛がかなり変わった手。良い手かは微妙。
 単に△73桂には▲68銀と早逃げしておくつもりでした。ところが△45歩▲同歩を入れてきたので、思わず▲75飛と打ってしまいました。何故かというと、それは実戦の手順を見てもらえればわかります。

 △74歩▲同飛△65桂
 ▲75飛には△74歩〜△65桂が自然。△45歩▲同歩が入っていると先手の74飛がすーーっと横に利くわけです。それで思わず打ったのです。まさに実戦心理。しかし良い手かどうかというと、あまり良い手ではなかったよう。難しいところです。

 以下▲68銀△24角▲34飛と進む。

広瀬戦 18.11.14B.gif

 この▲34飛が大きいと思いました。34歩を取ると将来▲34桂と攻める手が出来ますし、こちらの玉が上部に逃げた時に広くなるという意味があります。

 しかし第3図で△69飛が当然ながら厳しい手。68と89を狙って一種の両取り。受けるには▲24飛しかありません。以下△同歩▲79金

広瀬戦 18.11.14C.gif

 飛角交換をし、そして飛を詰ます目まぐるしい展開。お互い考慮時間もだいぶ使って迎えた第4図。ここで後手は飛を切って攻めるしかありません。先手に▲54歩という手が回ると後手陣が一気に危なくなるので、後手は追求の手を緩められません。

 そしてここで△79同飛成が敗着。こういう時は玉に近い、より守りに利いている金を取るのが普通。もちろんそんなことは広瀬四段も承知のうえですが、あえてセオリーを裏切ったのがまずかったようです。

 以下▲同銀△69飛

広瀬戦 18.11.14D.gif

 この両取りを▲88角と平凡に受けるのが好手。ここで▲88角打として▲54歩を狙うのが一見良さそうですが(これが広瀬四段の読みでもあったのですが)、△77歩が厳しい一着になって後手が良し。
 ▲88角だと平凡な△57桂成で良さそうですが、そこで▲54歩が味が良い。△48金ときても▲66角打が強烈で先手優勢。
 また△48歩▲同金△57桂成も筋ですが、▲同金△48金に▲54歩と詰めろをかけて、△39飛成にも▲17玉で「34歩」がいないために勝ち筋となります。

 他にも攻め方が色々あり、不安もありました。実戦の△48歩▲同金△77金は全く読んでいない手順(それが相手の狙いでもある)でしたが、ここで考慮時間が少し残っていたのが幸い。
 以下▲同桂△同桂成▲同角△79飛成▲66角△39銀まで一気に進み、ここで▲17玉△48銀成▲54歩が落ち着いた手順。

広瀬戦 18.11.14E.gif

 この詰めろが激痛。この時にも「34歩」があると△25桂で上に逃げると詰まされます。やはり中盤で歩を取っておいたのが大きかったようです。

 以下△32金に▲55角打(詰めろ)△33金打▲48角が冷静な手順。▲55角打を利かさないで▲48角だと△46桂が厳しくなります。

 後手は攻めが完切れ。一気に差をつけて大優勢になりました。対局中は相手が終盤鋭い広瀬四段なだけに、慎重に慎重に、と心に言い聞かせていました。

 後は着地だけ、だったのですが・・・

広瀬戦 18.11.14F.gif

 だいぶ進んで第7図。▲23銀と詰めろをかけたところ。ここで△37桂成▲同角△45飛成が普通の手順。そこで▲32金と必至をかけ、先手玉が詰まないので勝ちだ、と読んでいました。
 ここで単に△45飛成。驚きました。これに対して▲32金とすれば大差なく、勝ちなのは分かっていた。
 しかし取れる物は、と思わず▲同桂。そこで△55角。

広瀬戦 18.11.14G.gif

 飛び上がりそうになりました。この角の狙いは、例えば▲37香と受けると△36香として詰めろ逃れの詰めろ、というもの。先手はかなり持駒を持っていますが、55角がよく利いていて詰みません。

 焦りました。正直逆転されたのではないかと青ざめたのですが、▲18玉を発見してホッと一息。これなら△36香が詰めろになりません。
 以下△36香に▲52飛と必至をかけて、「勝ったかな」とそこに△19角成。最後までドキドキさせられましたが▲同玉△17香に▲18角が冷静な合い駒。これで有効な王手がかかりません。

 最後はかなり冷や汗をかかされましたが何とか勝利。しかし30秒将棋は恐ろしいです。ご覧になられた方には結構楽しんでいただける内容だったかと思います。

 次は佐々木五段と対戦。放送は1/6になります。是非ご覧ください。
 ちなみにこの広瀬四段戦はこちらで棋譜もご覧になれます。 

 しかし広瀬四段にはこの後の順位戦で負かされて、この勝利の喜びも半減。

 放送からだいぶ間が空いてしまい、すいませんでした。


 それではまた
ラベル:将棋
posted by 遠山雄亮 at 18:38| Comment(3) | TrackBack(0) | 対局結果 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
拝見していて第2図の▲7五飛と打ったのにはびっくりしました。微妙な手ということですが,どうも勝利の遠因になったような気がしました。
ところで,将棋そのものとは関係ないのですが,この将棋は解説の方の動かし方がやや雑で,大盤の駒の乱れが少しばかり気になりました。遠山四段にこんなことをいっても仕方がありませんが,棋士の方はそういった点にも心配りをされた方がいいように思いました。
Posted by spinoza05 at 2006年12月26日 19:32
遠山先生の指し回しはいつもいいですね。じっくり優位を築く勉強になります。楽勝に見えました。
広瀬四段はNHK杯でも凄まじい終盤を披露してくれました。やはり遠山先生もひやりとなさったわけですね。
銀河戦は早指しなので、私は手を理解するのに疲れます。解説が間に合わないし。
Posted by いしのひげ at 2006年12月27日 00:06
spinoza05さん>▲75飛は手としてはあまり良い手ではなかったのです、対戦相手とspinoza05さんを驚かせる効果はあったようです(笑)
駒の動かし方ですか。なるほど、それは確かに見ていられる側としては気になるとこですね。私も気を付けます。鋭いご指摘ありがとうございます。

いしのひげさん>この将棋は自分のペースで指せたと思います。楽勝、では無かったですが、まぁ快勝とは言っても良いでしょう。
確かに早指しにはそういうデメリットもありますが、その分は「銀河クラブ」で是非!
Posted by よんだん at 2007年01月05日 15:23
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック