初めてのTV対局。非常に緊張した中で迎えました。

まずは序盤の駆け引きから。この▲77角は工夫の一手。▲67銀だと△43銀とされ、同型が続きそう。こちらは先手なのであまりお付き合いはしたくありません。
そこでこの▲77角を思いつきました。本譜は△43銀だったので▲68飛として6筋交換を目指しました。もし▲77角ではなく単に▲68飛だと、△54歩〜△53銀とされて交換を拒否されてしまいます。
後手も工夫する手(△54歩や△33角)もあったでしょうが、本譜も先手が作戦勝ちをしたわけでもなく、互角の形勢。
相振りでは「四間飛車には穴熊」という格言がある(穴熊側が攻められにくいから)ので、後手は穴熊も有力だったでしょう。ただ小阪七段は軽快な棋風なだけに、おそらくじっくり囲いあうのではなく、どこかで激しくなると思っていました。

そして迎えた第2図。▲86歩に△34銀となったところ。この「▲86歩」は難しい手で、もう一手▲85歩とならないと威力を発揮しません。
もし△62金上ならばすかさず▲85歩とします。この歩突きは金無双に対して非常に大きい。
終盤で▲84歩△同歩ときかすだけで、後手玉は詰み筋が生じてきます。
この「▲85歩」が指せないまま決戦になりそうなので、△34銀は良いタイミングだと思い、ここでは少し嫌な気持ちでした。
ただ、ここでの▲55銀は好手でした。▲44角では△35歩とされて勢いが出てきます。
本譜は銀2枚の圧力で後手の攻撃陣を破壊してしまう構想。好みの展開になってきました。
秒読みではこの「好みの展開」に持ち込むのは非常に大切な要素です。

そして今▲28歩と受けた局面。辛い手ですが、1歩得と2枚銀の圧力に賭けました。この▲28歩は相手の意表をついたよう。
普通は▲22歩と叩くところ。△同飛なら▲33銀不成で良しなので、△31飛と指してきます。その局面で後続手が分からなかった。
こういう▲22歩のような手は、残ってしまうと大抵ヒドイ駒になってしまうので出来れば打ちたくない。
そこで▲28歩としても△31飛くらいしかない事を発見。実際△31飛でも大変なのですが。
しかし小阪七段は▲22歩の一手で△31飛でどうか、と考えていたようで、▲28歩にも△31飛とすると先手が得するので指しにくかったよう。しかし△31飛と辛抱しておけば大変な将棋でした。
実際ここで△37歩と指したのが敗着。以下▲同桂△同桂成▲同銀△27桂が後手の狙い。
これに▲同歩では△同歩成▲同金△57角成で狙いにはまりますが、さすがにそれは百も承知。
▲48玉△19桂成▲33銀不成と進んで第4図

手応えがありました。△27桂〜△19桂成で、こちらの陣形は香損の代わりに安定しました。しかも桂は後手の陣形には急所の駒で後手の桂は一瞬そっぽに。これはチャンスだと思いました。
しかも▲33銀不成で受けにくい。△15角は▲16歩。△13角は▲32銀成で、以下△25飛には▲11角成で馬を作りながら香損を取り返し、▲12馬の狙いもあって優勢。△51飛にはじっと▲33角成と馬を作り、これも駒の効率が先手が大差で良く優勢。
実戦は△同角▲同角成△31香と非常手段に訴えてきましたが、▲55馬が絶好で、これは負けられないと思いました。

そして▲55馬△18成桂にこの▲75桂が決め手。狙いは▲65馬と単純ですが、これが非常に受けにくい。
例えば△82銀なら▲64歩から6筋突破。
△74銀なら▲65角が強烈。以下△同銀なら▲同馬で終わり。△25飛なら▲74角から殺到して勝勢に近い形勢です。
実戦の△25飛にも▲11馬ではなく▲64歩が好手。「勝ち将棋鬼のごとし」です。以下△同歩▲同馬と手順に馬を進出。
以下は自然に寄せていきました。棋譜が公式サイトにあるので、ちゃんと棋譜も知りたいという方はこちらで
最初始まる前は緊張しましたが、盤の前に座ると随分緊張もほぐれました。とはいってもやはり固い様子は、TVで自分の姿を観ると感じました。
とはいえ将棋はまずまずの内容で途中からは完勝でした。
次も頑張ります・・・ と言いたいところですが、次は既に先日収録を済ませたので放送をお楽しみに!
それではまた
「相振り飛車」を指すのが苦手なので、
今回のような『丁寧な解説』を書いて頂けると、
判り易くて非常に参考になります。
早めの6筋突破は印象的です。
▲2八歩は好手だと思いますよ。
あと▲5五馬と引いた局面も、後の▲7五桂や▲6四歩が好手となって一方的。
もし、早めに▲8五歩が突いてあれば、後手は飛車を中段に繰り出してその歩を狙いに行ったかも知れません。
序盤から終盤まで危な気のない会心の指し回しと思っていましたが
やはり対局していると不安に思う部分もあるのですね。
最初どちらが遠山四段か分かりませんでしたが
解説を読み進めていく事で判断できました(笑)
相振り四間飛車は指したことがないのですが
やはり方針としては飛車先を早めに切るものなのでしょうか?
あと私なら43手目ではノータイムで44角と1歩得に走りそうですが…
詳しい解説のおかげで次から自重できそうです(笑)
決め手の75桂〜56角も非常に参考になりました。
次の広瀬四段戦も頑張って下さい!
うーん、プロの将棋は難しいですね。(^^
小阪七段と言えば、羽生戦の順位戦を思い出しますね。
k.oさん>とはいえ紙一重の勝負です。▲28歩はこの際の好手だったようです。
▲85歩はおっしゃる通りの含みもありますが、それでも突いておきたいところです。
spinoza05さん>ありがとうございます。やはり対局者には「実戦心理」というものがありますからね。
そのあたりはやはり相振り飛車は未開の戦法なので、私もいまいち分かりません。
みえみえの手は指しづらい、という事もあるのです。
次の放送も是非ご覧ください!
じゃがりんぽさん>小阪七段は素晴らしい切れ味の将棋ですからね。▲77角は工夫であり、そのあたりも考慮して主導権を握りに行った意味もあるのです。