一昨日は大阪入りして夕食後、A級順位戦を観に関西将棋会館へ。ところが棋士室には誰もいなくてがっかり。しかし関西の棋士室にはパソコンが設置されており(谷川九段が贈呈されたそうです)、それで順位戦を観ていました。
そこへとある関西所属の若手が現れ、何のきっかけか数年ぶりに将棋を指す事に。
久しぶりに楽しく将棋を指し(勝敗は別です笑)、21時過ぎに部屋へ戻りました。
そして昨日のC級2組順位戦藤原六段戦。5回戦まで三段リーグ時代にも対戦のある若手が続き、今局初めて先輩棋士と対戦。藤原六段は今年渡辺竜王を破った事もあり、かなりの強敵だと気を引き締めていました。
後手の私がゴキゲン中飛車で、先手の藤原六段が角交換から「佐藤流」の▲96歩。それに対し私は「遠山流」△72金で対抗。
藤原六段が▲66歩と5筋交換を避けたため、竜王戦第2局と似たような展開に。
この将棋は長手数だったのでは飛ばして行きます。
特に序盤が長かった。本格的な戦いに入ったのが22時頃。後ろの対局は既に終わっているのもありました。
この「遠山流」はまだまだ指されている数が少なく定跡も特に無いので、一手々々がどうしても慎重になってしまいます。
それにしても感想戦では藤原六段と読み筋が全然噛み合っていなくて、考えた時間の大半はこの将棋には関係の無いものになってしまいました。この将棋は序盤で使いすぎた(4時間半くらい使った)のが反省点ですが、こういうのは次に生きる事になるので何とも言えません。
ただこの後時間切迫に苦しめられます。
戦いが始まり、▲35銀に△22飛と逃げたところ。ここはまずまずかという気もしていましたが、勝負はこれからというところ。
残り時間は先手が1時間34分で後手が1時間17分。手数はちょうど60手で、ここから100手近くかかります(!)
この図の前の攻防で私に疑問手があり、苦しくなっています。そしてここで▲75歩が見習うべき手筋。以下△同歩▲76歩△同歩▲同金と進み、先手の銀冠が生きる展開に。
ここで厚みで対抗する、△74銀が勝負手。以下▲75歩△83銀▲65歩△63金左とこちらも無理やり銀冠を完成させて粘ります。
そして第4図。今△83同金と金と銀が交換になったところ。先手は1分将棋。後手は残り4分。時刻は12時を大きくまわっています。
この局面はどうやら勝負手が功を奏して難しくなったのでは、と思っていました。いや、もしかしたら逆転したか、と。
このあたりでフト「あー三段リーグだな」と急に思いました。三段リーグは持ち時間も短いので、最後は大抵1分将棋の叩きあいでした。棋士になってからはそういう事が少なかったので急にそう思ったのでしょう。
この局面でいきなり▲63桂。あまりの俗手で驚きましたが好手。以下△62角▲71銀△同角▲同桂成と進み、そこで△同玉だと▲65角と飛金両取りに打たれて持ちません。
そこで△65歩と「敵の打ちたい所に打った」のですが、これが大悪手。一気に敗勢に転落しました。
しかし先手も決めきれず迎えた第6図。今先手が▲33銀不成と桂を取ったところ。この銀が取れないようでは厳しいですが、取ると▲83桂が厳しい手で寄り筋。
そこで△53桂が渾身の勝負手。とにかく▲65馬が急所の駒。
この△53桂が結果的には勝着になったようです。1分将棋のなか、銀を取らずに桂を打てたのは冴えていました。
これに▲54馬は当然で、そこで△65香が狙いの一手。この手自体は何でもないので、先手から詰めろが続くと負け。ものすごく怖かったですが、どうやら詰めろがかからない様子。
この勝負手に先手が慌てて、気が付けば優勢に。そして
今▲91桂成ときたところですが、後手玉は危ない形ながら攻め駒が少ないため詰みを逃れています。そしてここで△48竜と角を取った手が△88角以下の詰めろになり、ついに勝ち筋に入りました。
最後は詰みもありそうでしたが、慎重を期しました。これだけ指してポカで負けたら目も当てられません。
最後の最後、△65香と急所の▲65馬を取り、終止符を打ちました。
総手数162手で1:26終了。さすがに疲れました。「勝てば疲れも吹き飛ぶ」とよく言いますが、決して吹き飛びません。
疲れた頭で感想戦をすると、どうも中盤以降随分悪手を指していたようです。反省点も多い将棋でした。第6図の△53桂だけはよく指せた気がします。
まぁ何はともあれ「遠山流」で勝てたのは嬉しい限り。順位戦は強敵が続きますが、次も頑張ります。
ホテルに帰ったのは3時少し前だったのですが、泊まっているホテルの玄関で、仲の良い記者の方とバッタリお会いしてビックリ。偶然ってあるんですね。飲みに行きたい気持ちもあったのですが、体が付いてきませんでした(苦笑)
残念。
それではまた
他にも色々コメントしたいエントリがあったのですが、書き込みそびれてしまいました。
ゴキゲン中飛車、しかも遠山流での勝利は素晴らしいです!
△5三桂は流石プロの手ですね…私のような一介アマには無理です;
今日はゆっくりお休みになられて疲れを癒して下さい。
遠山四段が定跡本を出すまで試行錯誤されながら開拓して下さいね。
楽しみに待っています(笑)
おめでとうございます!
この勝ちは大きいですね。
ものすごい熱戦でしたね。
悪手、疑問手が多かったとはいえ、
今年度ベストワンでは?(笑)
関西の若手とは橋本七段ですか笑
なにはともあれ帰宅早々解説ありがとうございます。
遠征しての対局お疲れさまでした。
本譜の後手の2筋逆襲はあまり見た事がなかったような気も。まぁ66歩をつかせて77角の筋をなくした効果なんでしょうか?
75歩が相当味がいいと思ってましたが、74銀は気がつかなかったです。74歩と収めるかと思ってたので。(まぁ収まらないと思いますがw)
この一局は、玉頭戦が大好きな私にはたまらないです。
連敗が続いていたので、この勝利は大きいですね。本当におめでとうございます。
勉強になります。
以前、谷川九段の「高速の寄せ」でも解説してあったと思うのですが、「7五歩」いい手ですね。このような手がひと目で指すことができればいいのですが、実践ではなかなか指せません。これからも参考になる手筋ご教授お願いします。
第4図辺りでは後手が優勢に思えますよ。しかしながら、後で打った△6五歩は不味かったですね。
(△5九飛成でどうだったでしょうか?)
第6図での△5三桂打ち。なかなか思いつきませんよ。持ち時間の少ない中で、こういった発想が浮かぶのは流石ですね。正に勝負手!
こういう強い戦いが出来れば、次局以降も良い結果が付いてきそうです。頑張って下さい。
また色々書き込みしてください!
きーさん>遠山流で勝てたのは嬉しかったです。定跡本を出すほどの戦法ではありませんが、更に磨きをかけて頑張ります。
駒落ち好きさん>悪手の数、好手の数、熱戦度、どれも今期no.1かと(苦笑)
関西の若手は残念ながらちょっと違います。段は一緒ですが。
是非将棋も指してください!
じゃがりんぽさん>おっしゃる通り、▲66歩をみて2筋を逆襲しているのです。▲66角の筋が無いのは大きいですからね。
玉頭戦は私も望む所だったのですが、形勢が悪い時は辛いもんです(苦笑)
温かいコメントありがとうございます。
いしのひげさん>指してる時は良いか悪いか分からず、とても不安でしたが、銀冠に組んだのは結果的に良い勝負手だったようです。