2006年11月02日

竜王戦感想戦

 昨日はVSで将棋会館へ。竜王戦と似たような形を指す。まだまだこの戦法は奥が深いようです。

 昼はVS相手と一緒に、沖縄の支部の方とランチ。お久しぶりでしたが、お元気そうで何より。楽しいお話を色々と聞かせていただき、有意義でした。

 夕方から衛星放送を観ながら控え室で若手数人で検討を始める。
 ここからは是非竜王戦中継サイト棋譜再現を見ながらお楽しみください。特に棋譜再現のコメント欄は非常に詳しい解説や感想戦の事が出ていて素晴らしいです。

 難解な序盤戦。私の目からは理解が難しい事も多く、研究課題になり得る場面が多かった。
 中盤、馬が出来て佐藤棋聖がまずまずかという気もしましたが、渡辺竜王も厚みを生かして反撃。 
 そして眼目の一手、78手目△66銀が出ます。これには驚きました。銀が詰んでいるのですから。しかしそれは佐藤棋聖の深い読みの一部。銀を取らせてもいけると見ていたわけです。こういう手はなかなか浮かばない手。しかもこれはその場で見えた手ではなく、前の手の時に候補に入っていたはずなので、そこまで読んでいるのかと驚きました。

 しかしこの将棋はこのままでは終わりません。というかまだ半分位。

 そして91手目▲61銀が渡辺竜王らしい好手。関東の控え室ではやや佐藤乗りだったのですが、これで△62金打としなくてはいけないのでは、後手が良いとはいえない感じ。というのも、こういう▲61銀のような手に対して、△62金寄や△71金と出来ないようでは大変としたものなのです。

 そして93手目▲65銀左に対して△57飛成と飛び込み終盤戦に突入。しかし、この94手目で△76歩と打つのはどうだったか。関東の控え室ではこれで後手が良いとされていたのだが、コメント欄や感想戦でも触れられている様子が無く不思議である。うちらが間違っているのかもしれないが。

 △76歩に対しては▲同銀は今出た銀を引くだけなのでありえない。となると、@▲54銀と飛を取るかA▲85桂と逃げるくらいだが、
 @△77歩成▲同金△54金▲72銀成△同金と進み、▲31飛が馬取りの先手だが、△44馬と交わした手が攻防に利く位置となり、後手が良さそう。
 Aこれには△44馬が絶好。▲54銀には△66馬と王手で飛び出して良し。▲67歩には△57飛成と逃げながら飛を成り込めます(ちなみにこれを銀で取ると玉を取られます)

 こんな事を検討していたのだが、実戦はバタバタ進み、▲101手目の▲79歩で渡辺陣が固くなり、どうやら竜王が勝ったのではないか、となり始めた。
 途中121手目の▲71角では▲71金が明快と言われていたが、▲71角でも寄りそうなので、まぁ大丈夫なのだろうと。
 
 ところが123手目▲75馬に△84銀打と受けた局面で検討陣の手が止まる。

 ここから大混戦が始まった。

 どうにもなかなか先手が勝てないのだ。図面も更新されないのでどうやら竜王も固まっている様子。以下▲85桂とすれば△82金の一手だが、そこで寄せがみつからない。
 簡単に寄りそうなのですが、渡して良い駒の選別も難しい。何度も検討陣が寄せをみつけたと言って手順を示すも、粘り強い後手陣に跳ね返される。

 そして▲84同馬が指された、と一報が入り、検討陣から悲鳴が上がる。全く検討されていない手なうえに、とても寄るとは思えないからだ。

 案の定まずかったようだが、他に寄せる手も無かった様子。ならば▲同馬で▲85桂△82金と浪費させてから▲76馬と逃げて、仕切りなおしを狙う手もあったか。

 そしてその後の攻防は凄かった。壮絶だった。ここからは筆舌に尽くしがたいので、棋譜再現のコメント欄や来週の週刊将棋でご確認を。

 それにしても、これほどまでに将棋は難しいのか、という事を再確認させられる一局だった。特に終盤は将棋の醍醐味が詰まっていた。手の善悪は関係無く、お互いの執念がぶつかり合っていた。

 この勝負を制した佐藤棋聖は大きなアドバンテージを得たはずです。でも渡辺竜王も巻き返しを図る事は必至なので、竜王戦はこれからますますヒートアップしてくる事と思います。

 検討陣も良い将棋を見た満足感に浸りながら焼肉を食べて解散。長い一日でした。

 それにしても衛星放送では一番面白いところが放送出来ず、とてももったいない気がしました。この終盤戦をTVで放送出来たらどんなに良かったか、と考えると惜しくてなりません。

 昨日は沢山のコメントありがとうございます。また何かありましたら、こうして解説したいと思います。


 それではまた
 
ラベル:将棋 竜王戦
posted by 遠山雄亮 at 15:17| Comment(3) | TrackBack(1) | vs・研究会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
△5七飛成の局面,佐藤棋聖はわずかな残り時間の中で長考されていましたね。△7六歩を考えたのかどうか気になるところです。
Posted by spinoza05 at 2006年11月02日 22:10
初めまして。
渡辺竜王のブログから来ました。

プロ棋士の方がブログなどで情報発信して頂けるのは
一ファンとして非常に嬉しい普及だと思っております。
私もゴキゲン指しなので振り党の遠山四段の活躍を凄く期待しております。

それでは失礼致します。
Posted by きー at 2006年11月03日 00:52
spinoza05さん>考えてダメだと考えられたようですね。詳しくは渡辺ブログで。

きーさん>初めまして。ゴキゲン指しとは気が合いますね(笑)これからもよろしくお願いします。
Posted by よんだん at 2006年11月03日 11:35
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック

【将棋】竜王戦第2局・佐藤棋聖連勝
Excerpt: 第19期竜王戦第2局。 挑戦者佐藤棋聖が勝ち、2勝0敗とした。 序盤は渡辺竜王がリードしていたが、終盤は手に汗握る大熱戦。 最後は佐藤棋聖が寄せ切り、接戦を制した。 遠山四段のブログに..
Weblog: TOEIC990点を目指す。
Tracked: 2006-11-02 22:31