今日は先日も書いた「棋士」の話の続き
 
 結局棋士は観ていただくファンの方がいないと成り立たない世界で生きているのに、何故そちらに比重を重く見ていないのか、という事を思われる方もいらっしゃると思う。

 それはひとえに「普及に熱心な棋士があまり恵まれていない」という現状があるからである。これは前回も書いた事だがもう少し突っ込んで。

 教室や道場を熱心にされている棋士(私の師匠もそうである)が、将棋を勝っている棋士に比べてあまり重んじられていない、という事がある。これは恐らくあまり知られていない事だが。
 そうなると必然的に全体的な傾向として対局にかける比重が大きくなってしまう事は、個人的な観点から見ればそういう発想に陥るのはやむを得ないと私は思う。

 そして更に言えば、地方にいる棋士はどうしても対局に関しては不利になる。これは皆さんが想像されている以上かもしれない。
 将棋界が全体的に対局に比重が重くかかっている中で、仮にどんなに強い信念を持ち普及の為にと地方に移り住んでも、結局対局の比重が重い為その信念が日の目を見づらい(希望も含め「見ない」とは言いません)のである。だから大平五段の行動はスゴイと思うし、私にはそのような行動には出れないのである(個人的な事情もある事も付け加えておく)。


 結局この状態を崩さなければいけないのだと思う。もちろん勝負の世界なので勝ったものが偉いのだし、その理論は理論として大切だが、そういったある意味「普及のプロ」としても素晴らしい棋士を大切にしなければいけないのである。

 今の状態を正常にする為に、私は「棋士の情報公開」を進めるべきであると思う。
 
 この情報公開というのは、別に個人情報を出す、という事ではない。
 「この棋士はこういう活動をしている」という事をもっと世に出し、アピールし、棋士が共有するべきであると思うのだ。

 例えばあるA棋士は○○で優勝した、という事はよく知られている。
 けれどB棋士がどこどこでいつ教室を開いている、という事はあまり知られていない。
 これは棋士間でもそうで、私もほとんど把握していない。
 ちょうど昨日師匠の教室の手伝いをしてきたが、この教室の事を詳しく知っている棋士はせいぜい10~20人位であろう。

 それは実は深刻な問題であると思う。そうした横のつながりが薄い事にもっと危機感を持って欲しい。大体こういった事を知らされないのも私としては非常に不思議である。

 情報をもっとオープンにし(現状では整理し、とも言える)棋士間で棋士の活動が認知されていけば、「あの人はこういった活動をしているんだ。スゴイな」という意識が広まると思う。そういう意識が広まれば「普及をしっかりしている棋士は素晴らしい」という認識が強くなり、そうしていくうちに個々人の意識が高まっていくのではないかと思う。

 そうなると対局に重くかかっていた比重も普及にも移っていき、そしてそれはハッキリ言ってしまえばお金にも表れてくるはずだ。そして私はそちらの方が正常な状態であると思う。

 ただ時間的な余裕はそれほど変わりは無く、『一回一回の活動を今まで以上に大切にしていく。そしてそれを断続的ではなく継続的にしていく』という事が大切なのだと思う。これは棋士の意識一つで随分違うはずである。もちろん私も含め、自戒を込めて。

 また、『共有し合っていない世界(会社)では、外からの意見を取り込みづらい』という事もあり、私はそこにも大きな危機感を持っている。

 とにかく棋士同士がもっと棋士の理解を深める、それがこれから棋士が大切にするべきな事であろう。それが結果として棋士が普及に熱心になる礎になると私は思う。

 オープンにする、という話でもうちょっと。
 
 最近感じるのは、「将棋連盟」は誰の物なのか、という事。今は「将棋を愛する皆の者」とうたっているものの、実際はそうではない。何故かというと、ファンの方の声が非常に反映しにくいからである。
 そこを改善していくと将棋界はぐっと良い方向に進むのではないか、と思う。

 ただしそれを実現する為には、「ファンの方の声を反映」するという、言うは易し行うは難し、という問題がある。
 そのための改善点として、先ほども書いたように、棋士同士が普及に関する情報を共有し、もっと言えば指導員の方や職員の方の活動をもっともっとオープンにし、とにかく風通しの良い団体にならなくてはいけないのであろう。
 内部の風通しが良ければ外の風も入ってくるはず。夏の暑い部屋と一緒であるはずだ。

 
 「棋士」という観点はここまでにします。思いの他長くなってしまいました。
 このシリーズも後数回にします。
 ・インターネットと将棋、そしてその見せ方
 ・連盟の形について
 この2つくらいに絞って書きたいと思います。この2つは私にとってこの1年間よく考えた事でもあります。


 それではまた