2006年10月23日

1年目を終えた今、考察C

 今日は先日も書いた「棋士」の話の続き
 
 結局棋士は観ていただくファンの方がいないと成り立たない世界で生きているのに、何故そちらに比重を重く見ていないのか、という事を思われる方もいらっしゃると思う。

 それはひとえに「普及に熱心な棋士があまり恵まれていない」という現状があるからである。これは前回も書いた事だがもう少し突っ込んで。

 教室や道場を熱心にされている棋士(私の師匠もそうである)が、将棋を勝っている棋士に比べてあまり重んじられていない、という事がある。これは恐らくあまり知られていない事だが。
 そうなると必然的に全体的な傾向として対局にかける比重が大きくなってしまう事は、個人的な観点から見ればそういう発想に陥るのはやむを得ないと私は思う。

 そして更に言えば、地方にいる棋士はどうしても対局に関しては不利になる。これは皆さんが想像されている以上かもしれない。
 将棋界が全体的に対局に比重が重くかかっている中で、仮にどんなに強い信念を持ち普及の為にと地方に移り住んでも、結局対局の比重が重い為その信念が日の目を見づらい(希望も含め「見ない」とは言いません)のである。だから大平五段の行動はスゴイと思うし、私にはそのような行動には出れないのである(個人的な事情もある事も付け加えておく)。


 結局この状態を崩さなければいけないのだと思う。もちろん勝負の世界なので勝ったものが偉いのだし、その理論は理論として大切だが、そういったある意味「普及のプロ」としても素晴らしい棋士を大切にしなければいけないのである。

 今の状態を正常にする為に、私は「棋士の情報公開」を進めるべきであると思う。
 
 この情報公開というのは、別に個人情報を出す、という事ではない。
 「この棋士はこういう活動をしている」という事をもっと世に出し、アピールし、棋士が共有するべきであると思うのだ。

 例えばあるA棋士は○○で優勝した、という事はよく知られている。
 けれどB棋士がどこどこでいつ教室を開いている、という事はあまり知られていない。
 これは棋士間でもそうで、私もほとんど把握していない。
 ちょうど昨日師匠の教室の手伝いをしてきたが、この教室の事を詳しく知っている棋士はせいぜい10〜20人位であろう。

 それは実は深刻な問題であると思う。そうした横のつながりが薄い事にもっと危機感を持って欲しい。大体こういった事を知らされないのも私としては非常に不思議である。

 情報をもっとオープンにし(現状では整理し、とも言える)棋士間で棋士の活動が認知されていけば、「あの人はこういった活動をしているんだ。スゴイな」という意識が広まると思う。そういう意識が広まれば「普及をしっかりしている棋士は素晴らしい」という認識が強くなり、そうしていくうちに個々人の意識が高まっていくのではないかと思う。

 そうなると対局に重くかかっていた比重も普及にも移っていき、そしてそれはハッキリ言ってしまえばお金にも表れてくるはずだ。そして私はそちらの方が正常な状態であると思う。

 ただ時間的な余裕はそれほど変わりは無く、『一回一回の活動を今まで以上に大切にしていく。そしてそれを断続的ではなく継続的にしていく』という事が大切なのだと思う。これは棋士の意識一つで随分違うはずである。もちろん私も含め、自戒を込めて。

 また、『共有し合っていない世界(会社)では、外からの意見を取り込みづらい』という事もあり、私はそこにも大きな危機感を持っている。

 とにかく棋士同士がもっと棋士の理解を深める、それがこれから棋士が大切にするべきな事であろう。それが結果として棋士が普及に熱心になる礎になると私は思う。

 オープンにする、という話でもうちょっと。
 
 最近感じるのは、「将棋連盟」は誰の物なのか、という事。今は「将棋を愛する皆の者」とうたっているものの、実際はそうではない。何故かというと、ファンの方の声が非常に反映しにくいからである。
 そこを改善していくと将棋界はぐっと良い方向に進むのではないか、と思う。

 ただしそれを実現する為には、「ファンの方の声を反映」するという、言うは易し行うは難し、という問題がある。
 そのための改善点として、先ほども書いたように、棋士同士が普及に関する情報を共有し、もっと言えば指導員の方や職員の方の活動をもっともっとオープンにし、とにかく風通しの良い団体にならなくてはいけないのであろう。
 内部の風通しが良ければ外の風も入ってくるはず。夏の暑い部屋と一緒であるはずだ。

 
 「棋士」という観点はここまでにします。思いの他長くなってしまいました。
 このシリーズも後数回にします。
 ・インターネットと将棋、そしてその見せ方
 ・連盟の形について
 この2つくらいに絞って書きたいと思います。この2つは私にとってこの1年間よく考えた事でもあります。


 それではまた

 


 
posted by 遠山雄亮 at 01:43| Comment(10) | TrackBack(1) | 長考 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大平五段の成績が上がったのは将棋のつくりが違うって事でしょうか。ふーむ・・・謎ですね。

加瀬教室は私は何年か前の観戦記で知ったぐらいでした。(王座戦二次予選決勝?内藤VS加瀬、玉頭位取りVS急戦向かい飛車)
情報を共有するって、ウェブ進化論に書かれたGogleのことでしたかね。
情報交換という点ではhttp://shogi-fukyu.com/というサイトもあるのですが、使いこなせているとは・・・(^^;
Posted by じゃがりんぽ at 2006年10月23日 18:24
「将棋世界」誌でも、棋士が運営されている「教室」が掲載されてますが、簡単に「行ってみよう!」と思えない部分もあったりします…。
(「敷居が高いかな?」と、思ってしまったりしますし…)そういう意味においても、「情報の公開」は大賛成です。

>教室や道場を熱心にされている棋士(私の師匠もそうである)が、将棋を勝っている棋士に比べてあまり重んじられていない、という事がある。これは恐らくあまり知られていない事だが。
「このような棋士を大切にしないといけない!」と思うのは、私だけでないと思います。


Posted by 一酔斎 at 2006年10月24日 13:58
じゃがりんぽさん>成績に関しては陰の努力があるのでしょう。
そうですか、日経新聞の観戦記に出ていたのですか。それは初めて知りました。色々とお詳しいじゃがりんぽさんが知らない訳ですから、やはり情報が出ていなすぎますね。
そちらのサイトは初めて拝見しました。最近更新がされていないようですが、過去ログを見るとなかなか素晴らしいですね。
情報を共有するというのは最近取り入れている企業が増えているようです。組織として、私はとても大切な事であると感じています。

一酔斎さん>詳細な情報が出ていないと、どんな教室なのか分からないですからね。もっとそういった内情をドンドン公開すれば、おっしゃるように敷居が低くなると思います。
≪「このような棋士を大切にしないといけない!」と思うのは、私だけでないと思います。≫私としてはそのような考えはとても嬉しいです。そういう意識が広がる事が大切だと感じています。
Posted by よんだん at 2006年10月25日 00:36
遠山先生、私の勝手な先のコメントにお返事をいただきありがとうございます。

さすがにプロ棋士は、ブログのコメントのやりとりにおいても、AとくるならB、CときたらDと言った具合の、的確な対応ができるなあと感心しました。

瀬川さん問題から始まって、名人戦主催の見直し、コンピュータとの対戦など、一時期に比べて将棋への関心が高まり、将棋界は追い風の次期だと思います。ここを失せず、多くの提言をされて改善のうねりを大きくされることに貢献してください。もちろん、棋戦でのご活躍を第1に、期待します。
Posted by 竜のヒゲ at 2006年10月25日 11:32
竜のヒゲさん>いえいえ。色々な意見があり、それを戦わせる事が将来に向けて良い事であると思っております。
私自身もそのうねりを大きく出来るよう、微力でも力になりたいと思っております。もちろん対局においても頑張ります。
Posted by よんだん at 2006年10月27日 11:09
棋士間だけではなくファンに対しても情報をオープンにするべきでは?
加瀬教室もそうですが、あまり知られてないのは情報を自分から発信してこなかったせいもあるかと思います。
まずは加瀬教室のHP、もしくはブログを作る事から始めてはいかがでしょうか?これは遠山先生がやることではないと思いますが、その必要性を師匠に説得できなければ、他の棋士も説得できないと思います。
Posted by じゃがりんぽ at 2006年11月01日 21:36
こんにちははじめまして。ネットとNHKと新聞と書籍でのみ将棋を楽しんでいる一ファンです。
「インターネットと将棋、そしてその見せ方」というテーマが控えているそうですが今言いたいことや願望を勝手に並べさせて頂きます。ですでの読んでいただけるだけで光栄ですので真面目にレスとか付けないでください。

地方でリアル道場設けて普及ということよりもやはりまず将棋倶楽部24などでプレイしている人がもっと強くなれるようにプロ棋士が中心となった無料のインターネット道場(教室・講座)があれば良いと思います。
はっきり言って大都会に住んでいても書店で扱っている棋書は限りがあり自力で勉強するのはかなり困難です。道場がいっぱいあったとしてもいきなり自分から門を叩くのはとても勇気が要ります。
これからファンを増やす近道はネットのみのプレイヤーでも十分強くなっていける環境を整えることだと思います。そしてインターネットの道場から各地の道場に気軽に行けるようにする仕組みがあればいいなと思います。
いまだにインターネットで全戦型の定跡解説が読めるようなサイトが無いのが非常に大きな疑問です。そのせいでネットの実戦ばかりで上達しない人が大勢いると思います。
強くなるには本を買って読みなさいという姿勢ではなかなか敷居が高いと思います。本屋が近くに無い子やお小遣いの少ない子供なんかには特に。

僕はまだインターネットの無かった小学生の頃にクラブ活動で囲碁将棋クラブを二年間も選択していましたが公立の小学校では本も置いてないし教師も指導など全くしてませんでした。中・高・大学と全く将棋とは縁が切れましたがインターネットで将棋を手軽に勉強できる環境があったらもっとハマっていたと思います。最近また将棋やりだしたのはネットで対戦するのが楽しいからです。
日本人の男の子なら必ず一度は将棋に興味を持つと思います。その時どれだけ楽しさを伝えられるかが肝心だと思いますが、これからの時代はインターネットでちょっと調べるところから始まると思うのでやはりそこでしっかり誘導できることが大切だと思います。

まあでも年を取ったらインターネットではやりたくないかもしれないのでリアル道場も滅びないよう地道なリアル拠点作りも頑張ってもらいたりです。

ちなみに僕も20代後半です。電車の中で将棋の本とか読むのが恥ずかしく感じるほど誰も将棋の本など読んでいない昨今の状況を打破し将棋本読んでるのがイケてると思われるぐらいの将棋大流行時代を作ってもらいたいと期待してますのでよろしくおねがいします!!
Posted by ネットプレイヤーZ at 2006年11月03日 04:30
ネットプレイヤーZさん。

知っていらっしゃるかもしれませんが、一応こういうサイトもあります。http://homepage2.nifty.com/shogi/
http://www.shogizanmai.com/
http://www.shogitown.com/
リンクをたどっていけば結構面白いサイトが見つかりますよ。
確かに本ではなくネットで有料でもいいから定跡が読めたら、と私も思ったことがあります。しかし、研究はプロの大事な企業秘密だから無理なのかなと思っています。でも一考する価値はありますよね。
道場はhttp://www.shogitown.com/dojo/top-d.htmlhttp://homepage2.nifty.com/okachimachishougi/doujou.htmを参考にすると良いかもしれません。
(ただ、やはり道場によって雰囲気には差が非常にあります。私は東京の3つ程しか行ってませんが、東京に住んでいて初めてなら、日本将棋連盟の道場がお薦めです。http://www.shogi.or.jp/~doujou/doujou/main.html
しかし、連盟の道場ははっきり言って他の道場よりちょっと高いですし、初段以上の昇段規定は厳しいだけで何も考えていません。初段以上あるなら蒲田将棋クラブをお薦めします。http://homepage3.nifty.com/garagara/index.html
地図→http://www.google.co.jp/maps?ie=UTF-8&oe=UTF-8&hl=ja&tab=wl&q=


アマチュアで将棋クラブ24をやってない人ってあまりいないんじゃないんですかね?私は初めて会った人には、将棋クラブ24でどれぐらいですかと聞きますし。地方の人もフォローできるでしょうから、開発を進めてほしいと私も思います。(特にリアル道場とインターネットサークルの融合化は一番効果があるのではないか?と思っていますが、どうでしょうね。まぁ私はただの一般人だからこんな無責任な事が言えるわけですがw)
Posted by じゃがりんぽ at 2006年11月03日 12:44
ネットプレイヤーZさん>貴重なご意見ありがとうございます。非常に参考になりました。またこれからも何かありましたらコメントください!

じゃがりんぽさん>もちろんファンに対してもっと情報をオープンにするべきだと思います。今ままでのような情報配信ではいけないと思っております。
加瀬教室に関しては、今年の頭くらいからHPを作り、細々と運営しております。色々あり、一般の方に目に触れるような作りにはしておりません。
「リアル道場とインターネットサークルの融合化は一番効果があるのではないか?」これは非常に参考になりました。今までこういった発想は為されていないと思います。是非提言させていただきたいと思います。
Posted by よんだん at 2006年11月04日 13:23
24サークルつながりと言う事で。(会員20万人ですからねぇ。)http://www.shogidojo.com/links/24circle.htm
住んでいる地域と将棋サークルの融合は何件かあるようですが。
http://tanpopo.sakura.ne.jp/~enjyu/sakura/
http://www1.kcn.ne.jp/~ikemasa/sikakun-no-ie.html
http://runaway1.hp.infoseek.co.jp/
私はインターネットサークルにいくつか入っていますが、運営は難しいです。
(礼儀がなってない人や問題がある人は絶対居ます。それでトラブルなんてしょっちゅうです。私のところは紹介で入る人が多いせいか、なかなか良い雰囲気です。サークルのつくりが良いせいもあるでしょうが。アドレスを出すと私の身元がばれてしまうので出せませんが・・・(^^;)
作るなら丁寧に作らないと取り返しのつかないことになるかもしれません。道場と融合させるなら実名でしょうしね。個人情報とか今はうるさいですし、管理をしっかりしないといけません。(近代将棋は実名ですが、偽名も多そうです。)
Posted by じゃがりんぽ at 2006年11月06日 20:51
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