棋士の本分は二つ。普及と対局である。
さてその対局は、私でいえば今のところ月に3〜5局。月に3〜5日って随分少ないなぁ、と思う方は多いと思う。
ところが見方を変えるとそんな事も無い事が分かってくる。
対局と同数かそれ以上に練習(VSや研究会)の日がある。
そして対局というのは想像されている以上に負担がある。
体調を整える意味でも前日は何も予定を入れないという棋士が大半であろう。
これもあまり知られていないが、対局の後数日はその疲労が体に染み渡る。特に順位戦ともなれば、2日からひどい時は1週間程度疲労回復に時間がかかる。
さらには一人コツコツと勉強する事ももちろん大切(これがメインの人も多いだろう)。またトップ棋士の対局を検討するという事もたいへん勉強になる。
こうして考えると、あまり時間が無いという事も事実なのである。(余談だが、現役でありつつ理事をされている先生がとてつもない程大変なのは、この事からも明白である。)
これ以外にも、自分自身の生活もある。多少なりの息抜きの時間も欲しい。私だとブログをもっと充実させたり、ネット上で勉強したい事も沢山ある。また自営業者なので、面倒な事も色々とこなさなくてはならない。
これはあくまで私の例。しかし私と同じくらいの年齢の若手棋士は、そんなに変わらない生活をしているのであろう。対局だけで結構忙しくなっているのである。
そしてさらに考えてみると、これで毎月対局が相当数あり、イベントにも引っ張りだこのトップ棋士は、その忙しさは半端では無いであろう。
羽生三冠のように、対局も数多くこなし、その多くがタイトル戦で地方を周り、そして将棋のイベントだけではなく他のイベントにも引っ張りだこだと、一体いつ休みいつ将棋を勉強しているのか、不思議にすらなってくる。
確かに勤め人の方のように、毎日朝出勤して夜まで働いている方より、総合時間では少ないかもしれない。ただ対局時の精神の疲労など、目に見えづらい疲れは溜まるのである。
つまり棋士がこのままの状態で、普及に多大な労力を注ぐ事が出来るのか、疑問も感じざるをえない。
私は普及を強化するなと言いたいのではない。むしろ強化すべきと断言したい。
しかしこのような現実があるのも事実なのである。
一回一回の普及に力を注ぐ事は出来ても、大きな視点で力を注ぐ事をする事はなかなか難しいのである。
最後にちょっと余談。
そうして忙しいのにも関わらず新潟に移住した大平五段の、そのエネルギーには感心する。ただ私には絶対に出来ない事なので素直にうなづけないのである。また、やはり東京に住んでいる方が有利な面もあり(対局に関する事で)、そういう事を全て承知で行く事は容易ではないし、正直私には理解出来ない事である。
もう一つ、ある種対局偏重気味な現状は変えるべきだと思う。これは棋士の生活を普及中心にしろ、というのではない。それは現状ではなかなか厳しいし、良い将棋を見せるという本分もおかしくなってくる。
そうではなく、「対局で勝った人」だけではなく「普及に多大に貢献した人」もちゃんと恵まれる世界になるべきだ、という事である。これはお金ももちろんだし、世間のそして将棋界の目というのも少し意識を変えるべきである。これはプロの世界だけではなく、アマチュアの世界でも同じ事が言えるであろう。
それでは棋士はどうあるべきなのか。という事になるのだが、長くなってしまったので私なりの結論はまた明日にします。
少しでも棋士がどういう事をしているのか、その手がかりにしていただければ、と思う。
また棋士の事を書くと、棋士仲間の中には「おかしい」と思う方もいるかと思う。しかしあくまで私の日記なので、私の主観に基づいているという事をお忘れなく。それでも「おかしい」と思う方は何でも言ってください。そうして話す事も大切だと思います。
それではまた
【関連する記事】
私は青色申告業者なんですが、結婚して妻に手伝ってもらえるようになり、楽になりました。専従者ということで手当ても嫁に渡せますし。遠山先生もよい女性に巡り会われれば、将棋に打ち込める体制になるかもしれません。話は違いますが、大平五段は新潟で家庭を持たれたら、普及に好影響でしょう。
指導棋士では食えないと将棋世界藤内忍氏の記事にありましたが、そのあたりがこれからの連盟の仕事でしょうか。
トーナメントプロは、ファンがワクワクするような将棋を指してこそ、普及にも効果があるのです。序盤はほとんど定跡通りで、ちょっと工夫したとたんに不利になって、最後に簡単な見逃しをして負けるような将棋、そんなものでは銭は稼げませんぜ。普及も大事ですが、まずは、せめてタイトル挑戦者決定戦に出られるほどには精進してください。
渡辺竜王が言っていましたよ、タイトルとったらどこへ行っても喜んでくれるので、普及活動も頑張るって!
私には絶対できませんというのが、自分の可能性を潰していませんか?
自分に必要だと思うなら、短い期間でも行ってみた方がいいと思います。
アマの方は平日サラリーマンをしているわけで、プロより研究の機会では恵まれていないはずです。こういうことを書いて彼らに恥ずかしくはありませんか?
他の棋士と違って、遠山四段は大卒で一般企業に就職した友人も周辺にはたくさんいるでしょう。彼らと話をするチャンスはないのでしょうか?どの職業でもプロになったらお終いではなりません。アマ(学生時代)よりさらに研鑽を積まないとついていけないのが実情です。時間だけでなく、精神的にもストレスがたまります。大変なのは棋士だけではありませんよ。
棋士の中では平衡感覚を持っている方だと思っていただけに、正直大変失望しました。
確かにそういった雑務を変わりにやっていただける方がいると随分楽になる気もします。でも私はそういうのを自分でやらないと嫌な性分でして(汗)
指導棋士でも食べていけるような世界にならなければ未来は暗い、と私は思っています。
竜のヒゲさん>私自信が間違っているわけでも竜のヒゲさんが間違っているわけでもなく、どちらの側面もある、という事だと私は思います。もちろん対局は私も精一杯頑張ります。
ちょっと・・・さん>言い訳や泣き言に聞こえたのかもしれませんが、私は現実を正直に述べただけです。大変なのはどの職業も一緒である事は私も十分に承知しているつもりです。
「アマに勝ってから言って欲しかったですね。」そういう価値観で計られるのは悲しく感じます。しかもここはあくまで私のブログであって、非公式の場なのですから何を書いてもある程度自由が認められるはずだと認識しております。
「確かに勤め人の方のように、毎日朝出勤して夜まで働いている方より、総合時間では少ないかもしれない。ただ対局時の精神の疲労など、目に見えづらい疲れは溜まるのである。」
から来たものかと。
つまり、普通の勤め人は単純作業でストレスがたまらないが、プロ棋士は一回の作業が大変でストレスがたまるんだ・・・というに読み取られたのではないでしょうか?(かなり大げさに書いていますが。用は、棋士という人間を特別に思っているか、思っていないかでしょうな。そういうつもりで書いたものではないと私は思いますが。)
名人戦問題などで今のファンは棋士というものに不信感を抱いているので、そういう話には非常に敏感なはずです。そのなかで信用度の高い遠山先生の記事はショックだったかと。(http://d.hatena.ne.jp/mozuyama/20060927の記事でも批判的な内容です。このサイトは影響力が大きそうに思いますが、どうなんでしょうね。ただ、今回の名人戦問題を肯定する記事はファンもマスコミも含めてあまり見かけないような気がします。私はどちらでもありませんが。)
まぁこればっかりは、ちょっと・・・さんの話しを聞かないとわからないんですけどね(^^;私から見た感じはそうでした。(つくづく思いますが、本当に文章が下手って嫌になります・・・_| ̄|○)
別に特別扱い等々は関係無く、あまり深い意味はなく「皆同じように大変なのですよ」という事を言いたかっただけです。棋士は暇で遊んでばかり、という風潮を見かける事があるので・・・
棋士に対する不信感ですか。私も正直不信感を抱く人もいますが、尊敬に値する方もいっぱいいます。どんな組織でも言えるように、将棋界もこれだけの人数がいるのですから色々な人がいる、という事は分かっていただきたいです。
http://seikikai.at.webry.info/200604/article_14.html
http://blog.goo.ne.jp/charme_yoko/e/458515326accac7174f15548c34f464c
http://blog.goo.ne.jp/charme_yoko/e/85141f92abddc33832b5aceedb0f8b97
棋士に対する見方はいろいろあるでしょうけどね(^^;(まぁ毒を指すなら某会長のHPと将棋世界の名人戦問題の某作家の記事でしょうか。まぁ正直どうでもいいですけどねw)
遠山先生は尊敬してますよ。はい。