序盤〜中盤の入り口までは森下九段がリードしていましたが、そこからツツカナが地力を発揮。
コンピュータが得意とする中盤のねじり合いで差を付けられてしまった印象です。
今回は今までの振り返りと視点を変え、先手後手の勝率について記します。
ここまで電王戦は計10局行われました。
手番だけを抜き出すと、以下のようになっています。
第1回:後手0−1
第2回:先手1−2、後手0−1−1
第2回リベンジマッチ:先手1−0
第3回:先手1−1、後手0−2
トータル:先手3−3、後手0−3−1
参考にする局数は少ないですが、とはいえ見逃せないデータです。
先手が若干有利なのはプロ公式戦で証明されていますが、こと対コンピュータではそれが顕著に出ています。
コンピュータ同士でも先手がかなり有利のようで、電王トーナメントでも先手の勝率の高さが話題になりました。
人間とコンピュータが手を結んだタッグマッチは先手の3−1。ここでも結果がリンクしています。
なんだ将棋は先手が有利なんだ、と言うのは簡単ですが、もう少し踏み込んで考えるとそこにコンピュータ将棋の特徴があります。
コンピュータ将棋は初形で先手+70程度と判定するそうです。
逆に言えば後手は-70と僅かに不利。
淡々とした駒組みが続けばこの差はなかなか埋まりません。
そうこうしているうちに、激しく動くと-70より1点でも評価値が高いという局面があれば、性質上そちらに飛び込みます。
結果としてコンピュータは、先手番の時はじっくり進めて+の評価値を保ち、後手番の時は-の評価値を挽回しようと激しく動くのです。
ツツカナが第2回と第3回で指し回しが全然違い、実力が大きく上がったという表現を見かけることがあります。
勿論成長しているのは事実ですが、上記を考えると実力が大きく上がったと証明するのは難しいと思われます。
ツツカナは第2回は後手番だったので評価値を挽回しようと激しく動きました。
第3回は先手番で、評価値を+で保つためにゆっくり指しました。
どちらもツツカナであり、コンピュータ将棋の特徴です。
激しい局面は評価値のブレが大きいので、点数を間違える可能性が高くなります。20手読んで+100と判断しても、読まなかった21手目で-500になる、という変化は将棋にはよくあります。
なので後手番のコンピュータが突然激しく動いてきた時は、評価値を無理に挽回しようとしています。そこに隙が生まれることはわりとあります。
人間側の3勝のうち、2勝は後手のコンピュータが無理に動いてそこにカウンターを合わせました。
今回の豊島七段は、平凡に指すと評価値を挽回出来ないとみた後手番のコンピュータが定跡外の手を指し、そこをついて勝ち星をあげました。
コンピュータ将棋は1点でも評価値の高い手を選ぶ性質があります。
その性質が先手と後手での指し方の違いを生み出すのです。
手番によってまるで別人のような指し回しを見せるのは人間と違うところで面白いですね。
さて第5局は人間側の先手番。屋敷九段はA級順位戦という舞台で先手番16連勝という記録を持っています。
対するPonanzaは電王トーナメントで、決勝Tを全て後手番で勝ち抜きました。
まさに頂上決戦です!
私も大変楽しみです。皆さんも土曜日をお楽しみに。
屋敷九段−Ponanza戦 対局ページ PV
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それではまた