コンピュータ将棋はときに度肝を抜いたり常識を超える手を指すことがあり、そこに魅力と将棋の深さを感じます。
今日は大会のキーとなった将棋から名局を簡単にみていきます。
オープニングマッチとなった予選リーグ1回戦Bonanza―Apery戦。
双方10秒将棋での戦いが続いています。△3三歩と後手のAperyが打ったところ。
詰めろを回避しただけと思いきや、とんだ毒まんじゅう。
▲3三同角成で詰めろを継続しようとすると△9五桂以下長手数の詰みでトン死します。
そこで先手は▲3五角と詰めろを継続し、以下△5三金打▲6二金という手順で先手が勝ち切りました。
10秒将棋とは思えないレベルの高い手順でした。
予選リーグ最終戦では結果的に4位(シード権獲得の最後の枠)を争う直接対決となったやねうら王―Apery戦が興味深い一戦。
やねうら王の持ち味である「やね裏定跡(詳しくは
開発者のブログより)」にAperyが引っかかり、角換わりの富岡流(プロ間で詰みまで研究されている有名な定跡)で一気に終局。
コンピュータ将棋は定跡では1秒で指すので、まさに秒殺でした。
結果的にこの星が両ソフトの運命を大きく左右し、やねうら王は4位入賞、Aperyは5位決定戦で敗れて惜しくも入賞を逃してしまいました。
それにしてもコンピュータ将棋でこういう将棋が表れるとは驚きました。
決勝トーナメント2回戦のツツカナ―Aprey戦では、ツツカナが人間のような時間の使い方を見せました。
圭=成桂 杏=成香
▲6二桂成自体は普通の手ですが、この手に約15分使っています。これはコンピュータ将棋としては異例の大長考。しかも残り20分(切れ負けなので0になったら即負け)からの大長考は、トラブルではないかと会場はざわつき、立会人としても肝を冷やしました。
ツツカナはこの長考で全てを読み切り、文字通り全ての手を読んでいるので以下は全て1秒指し。今までに無い試みに会場ではツツカナの開発者に称賛の声が送られていました。
決勝トーナメント5位決定戦1回戦習甦―AWAKE戦ではザ・コンピュータ将棋という手が。
▲2四銀と3五から歩頭に進んだところ。99%成立しない類の攻めですが、この場合▲7一角と▲4一角の筋があることや自玉が堅いことで成立していたかもしれません。
今大会は凶暴な攻めを見せていた習甦。予選では裏目に出ていましたが、決勝トーナメントではそれがいい方に出ていたようでした。第2回に続いての登場でプロ棋士へのリベンジなるでしょうか。
決勝のponanza―ツツカナ戦は変則的な序盤戦から居飛車―振り飛車穴熊に。穴熊のponanzaが猛攻をしかけ、ツツカナが受ける展開。
△5六歩は驚きの一手。銀取りを放置して次に成ることの出来ない垂れ歩。この歩は結果としてと金となり、先手陣を崩壊に導きました。
人間には、特にこのプレッシャーのかかる決勝という舞台ということもあり、指せる人はいないであろう好手(たぶん)でした。
決勝は専門誌など報道もあるかと思いますのでこのくらいで。
面白さを少しでも感じていただければ嬉しいです。
他にも面白い将棋が多く、もっと世の中に出していきたいと思います。
明日は3日間の総括とコンピュータ将棋との今後について書く予定です。
それではまた